第56話 TikToker写楽

「クワヤマダくん、オレのティックトック動画どうかなぁ。」


「せんぱいが、トゥクトックを始めるとは、驚きでしたよ。」


はタイで走っている三輪自動車だね。あれも、いいよね。乗っても楽しいし、見ていても面白い。没入感がある。」


「そうそう、先輩のティックトック動画には、があるんですよ。横長のワイド画面で見るのもいいんですが、縦長たてながの方が、集中して見られるんですよね。」


「やっぱりそうだよね。どこかの脳科学者が、横長の画面だと、情報量が多すぎるから人間の視点は散るんだって。それに対して、縦長画面は、視点が定まり没入するらしいよ。」


「若者がティックトック動画にはまるのは、人間の生理的な現象が利用されているんですね。」


「オレの、ドームのないプラネタリウムだって、縦長構図でアップで見たら、やばいと思うよ。いろいろな意味で。」


「確かに、横構図なら、様々な情報量が満載なので、アート作品であることが分かりますが、縦構図のアップだと・・・。」

「クワヤマダくん、以前、写楽はミステリアスだから歴史に残ったみたいなこと言っていたよね。」


「作者が分からないことは、当時の江戸っ子の心を掴んだのかと・・。」


「それもあるかもしれないけど、やっぱり、写楽はだったんだと考えている。あのを企画した蔦屋重三郎は2022年の未来を見ていたね。」


「変顔ティックトックは、かなりバズりましたよね!」


「縦構図で、変顔アップを見せる先駆者が、蔦屋重三郎と謎の絵師ってわけ。」


しくルンです。江戸時代に写真の写るを名前に使っていることが、ティックトックを予言しているかのようで、怖いですね。」


「そうだろ、写真が無い時代に、写楽とは、謎めいている。写るという概念をアートに持ち込んだ蔦屋と写楽はやっぱり凄いんじゃないかな。」


「役者が自ら変顔をしている絵(画像)を、拡散したと考えれば、その滑稽ぶりに江戸っ子は食いついたとも言えますね。」


「芸能人だって、注目を浴びるために、時々、変顔アップするもんね。」


「普通のすました顔では、今一盛り上がらなかった大首絵を、スターダムに押し上げたのが、変顔アップと考えると、アート界のブレイクスルーに匹敵する出来事ですよ。」


「この法則を真似たのが、ピカソの泣く女だ。しかし、前も言ったが、変顔にし過ぎて、破門された。(第47話参照)」


「程よく、変顔がいいですもんね。変顔はスパークするからって、役者さんが、調子に乗り過ぎてやった変顔は逆に引いちゃいますもんね。」


「変顔アップにもボーダーラインがあるってことかな。」


「それにしても、写楽の魅力がまた一つ増えました!ティックトッカー写楽ですね!」


「ただ欠点もあるらしい、没入し過ぎて疲れるから、すぐにスライドされちゃうんだ。クワヤマダくんもオレの動画最後まで見たことないだろ。」


「・・・・。」









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