第55話 バンクシーの茶番
現代アートのブレイクスルーをつくった原動力は非道徳性だ。
学校教育に道徳の時間がある日本人からは、この非道徳的な発想は生まれにくい。
デュシャンは男性用小便器を泉と題し、適当な誰かのサインを便器に書き、展示したが、非道徳的とされ撤去された。
その後、彫刻からはみ出した、レディメイドの作品は、現代アートの出発点として歴史に残った。
学校の便器に、油性ペンで他人の名前を書いて指導を受けた輩もいるだろう。デュシャンをオマージュしましたと言い逃れができた人間はいたか。
村上隆のマイ・ロンサム・カウボーイは、全裸の青年が射精をしている。精子はS字を描いて天にのぼる。
「パパ、なんで、ス―パサイヤ人みたいな男の子のちんちんから白いものが出ているの?」と一緒に観ていた子どもから質問を受けたときに、非常に気まずくなった人も多いだろう。
「この作品は16億円するんだよ。スーパーサイヤ人のおしっこは白いんだ。」としか言えない。
精子ボーイに16億円もの価値をつける人間が、美術の世界にいることを、学校の授業で教えた方がいいような気がするが、はばかれる。
バンクシーの落書きは本当に正義なのか。
小池都知事はバンクシーの落書きを認めているわけではないと公言していた。
しかし、都内で見つかった、バンクシーと思われる落書きが1億5千万円で落札された事実は、高架橋やシャッターの落書きを消すことを見直すことにつながっただろうか。
バンクシーっぽい絵なら、消される確率が減ると考え、町中バンクシーもどきの落書きが溢れないのはなぜだろうか。
落書きは非道徳的なはずなのに、市民権を得てしまうことは、ちょっと違うと思っているストリートアーティストが多いのか。
そして、バンクシーの正体が分からないというのは嘘である。
これだけ、情報網が発達した現代で、この茶番は、非道徳的である。
「せんぱ~い、今日の現代アートの講義で来た先生は、どこの人ですか?」
「えっ?知らないよ。適当なこと言って帰ったよね。学生たちも脱落者(居眠り)が多かったねぁ。」
「せんぱいも知らない評論家ですか?」
「知らないなぁ。また、教授の
「デュシャンやバンクシーみたいに、ミステリアスを売りにしているアーティストと同じように、評論家もそういうタイプがいてもいいかもしれないですね。歴史に残るこの美術評論は実は誰が書いたものか分からないという・・。」
「評論家版、写楽ってとこかな。」
「写楽もミステリアスですよね。そろそろ、浮世絵の話をせんぱいとしたいなぁと思っていましたよ。」
「今日は、時間がないから、またいつかね。」
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