第53話 SDGsに淘汰されチーズ
「あのさー、
「何それ?SDチーズ?おやつのチーズのこと?」
「あれは、ベビーチーズ、君が想像しているのは、多分三角チーズだよ。」
「そうそう、さすが、美大生、想像力豊かね。」
「美大とかは関係ないね。おれ、美大に行かなくてもよかったかなと最近思っている。」
「課題とか、大変そうだものね。アーティストとしてやっていくなら、美大で高額な学費を払うくらいなら、個展をバンバンやった方が注目されて、道が拓けるかもね。」
「そうなんだ。美大藝大に行かない方が、かっこいい世界観もあるんだ。正体不明のアーティストの方が、断然ミステリアスだろ。最近は、出身校や実名を伏せて活動するアーティストが増えている。顔を見せないなんて当たり前になってきているよね。」
「歌う方のアーティストはそういう人増えているかも。やっぱり、大学は単位があるからね。講義と制作の合間を縫って、バイト生活は心身共に疲れそうね。で、SDGsって何?」
「地球の自然環境や、資源問題、貧困やジェンダー問題を変革するべく、つくられた17の目標。世界で今後15年間以内に達成するらしいよ。持続可能な開発目標のための国際的な開発目標ってやつ・・。」
「あっ、聞いたことある。
「その12番に、つくる責任、つかう責任 (持続可能な生産消費形態を確保する)という項目があるんだけど、今回の課題がそれなんだよ。」
「彫刻科には、重いテーマね。」
「彫刻科の先輩にダイラさんっていう人がいるんだけど、ダイラさんは、その目標を知ってか知らずか、若い頃から、持続可能な開発目標を意識していたかのような、作品を制作しているんだ。」
「あっ、あの、みうらじゅんと仏像巡りしている人?」
「違うよ、あれは、いとうせいこうだよ。似てるけど・・。」
「三角形の鉄板を組み合わせて、大きなドームをつくるんだ、そして、無数の小さな穴を開け、ドームの内側から光を灯す。すると、プラネタリウムみたいな幻想的な光がこぼれる作品。」
「私も、その作品見たことがあるわ。そうか!三角形の鉄板が三角チーズみたいだから、
「君、ふざけてるでしょ。まぁ、もしかしたら、そうかもしれないけど、材料や素材を再利用しているところに凄さがある。30年前の作品が現存しているんだよ。しかも、その作品を新作とコラボして使ったりしている。人に感動を与えつつも、自分に与えられた限られた素材で表現し続ける。正しく、SDGsだよね。」
「ふ~ん。何だか難しくって眠くなってきた。」
「ダイラさんは、最近は特殊照明作家として、光源だけ担いで、世界中のアーティストを照らしているんだ。究極のSDGsじゃない?」
「ZZZ・・・」
「おいおい、話はまだ続くぞ!」
「だって、長いんだもの!」
「で、オレは、何を作ったらいいの?」
「つくらない責任、つかわない責任で、何も、つくりません!って言っちゃえばいいじゃん!松澤
「君、よく松澤侑氏を知っているね。でも、そんな勇気ないよ・・・。彫刻科で何も作らなかったら、彫刻科にいる意味が無くなるからね。」
「彫刻科に入ったことで、表現の幅が小さくなっていることにそろそろ気付いた?」
「ドキッ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます