第47話 顔面芸術論③ピカソ破門の謎
「ダイラさーん、顔面芸術論について妙なことを言っている
「こんにちは、ヒガソです。
「泣く女でしょ。」
「ピカソは20世紀最大の画家と言われていますが、顔に固執した点では、顔族のDNAからは解放されていなかったと思うんです。」
「顔族?DNA?そんな面倒な話だったら、聞きたくないな。で、どんな説?」
「歴史を遡ると、人間は飽きずに様々な顔を作ってきました。ピカソがキュビズムで描いた顔は、実は禁じ手でした。後に顔族から破門されます。」
「まぁ確かに、凄いかもしれないけど、やり過ぎ感は半端ない。でも破門?聞いたコトないぜ。」
「人類学者の竹倉さんは、オニグルミを割って食ったときに、断面を見て、ハート形土偶の顔と重なり、土偶は植物由来であることに気が付きました。植物の精霊を模したものが、土偶の原型ではないかと仮説を立てた論考(本)がみうらじゅん賞を受賞しました。」
「みうらじゅんが食いつくところが、今一よく分からないんだよね。ゴム蛇ブームや崖ブームも謎だったけど。ダイラさんにみうらじゅん賞を獲らせたいと考えている輩がいるみたいっすよ。ダイラ物語を書いていると書いていないとか・・。」
「精霊にも顔があるっていう発想はその頃からあったんだね。長い間、顔にこだわっているのが人間なんだなぁ。じゃ、オレたちは、顔族の末裔ってことか?」
「ダイラさんは違います。主に顔をつくりたくなる衝動がある人たちが顔族です。何でも、そこそこの位置に目と鼻と口っぽいものを見つけると顔だ!と叫ぶ人たちです。」
「あぁ・・。火星に顔っぽい建築物があるって騒ぎになったことあるなぁ。ただの影じゃん説が有力だけど、
「まさしく、彼らは顔族の末裔です。」
「で、ピカソが破門っていう話は何なの?」
「ピカソのゲルニカはご存知ですか?」
「おっ!挑戦的だね!ムサビの彫刻科を試してるのかな?」
「いえ、私もムサビの彫刻科出身です。ゲルニカには、顔族のメタファーがあるんです。」
「またメタファー?後ろメタファーでしょ・・。」
「岡本太郎は、ピカソのゲルニカを観て衝撃を受け、バタイユの講演を聴いて覚醒しました。そして、母親の青白い能面(仮面)の下のドロドロとした人間性から、顔族の後ろメタファーを感じとり、顔族の引導を渡されました。太陽の塔の思想の根源には、シュールレアリズムが土台としてあり、曼荼羅技法でアプローチし、不動明王の顔を模した怒り顔や、宇宙に向かうパラボナアンテナのような顔、腹黒い顔や、地下内部には原始の顔を設置することで、原始から続く顔族の存在感を世界に発信しました。」
「壮大だね。で、ゲルニカの後ろメタファーは何なの?」
「はい、ピカソは、キュビズムの顔が禁じ手であることを帳消しにすることもできず、暗中模索していたところ、ゲルニカの中にメタファー的に顔を描くことを思いつきました。ゲルニカの絵を真ん中で分断し、左側の絵をそのまま右側にひっくり返して合わせると、悪魔のような顔が出現します。顔族としてのプライド、後ろメタファーをそこにコッソリ込めたのです!」
「ただし、現在に至るまで、後ろメタファー(隠し絵)は、顔族の誰にも気付かれず、破門となりました。」
「顔族のエースとなった岡本太郎が、顔の変形を寸止めしているのは、ピカソを憂いてです。調子に乗って先生に反抗し過ぎて退学になったヤンキー先輩を憂い、優等生に変化する元ヤンみたいな・・。」
「知らなかったなぁ~。それは、歴史を変える大発見だね。クワヤマダくん、ヒガソくんは凄い発見をしたんだね。」
「ダイラさん、これは、ヒガソのただの空想ですから・・。」
「ヒガソくん、君が破門されるよ。」
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