第46話 顔面芸術論②
「ムサビの後輩に、虚ろな顔を作品の中心に据えて描く、石田テツヤくんという人がいたんだ。」
「あ、知っていますよ。ダイラさんが受賞したキリンコンテンポラリーで数年後、奨励賞を獲った方ですよね。」
「あの人の絵は強烈だよね。あの顔は一回見たら忘れられなくなる。自画像かなと思って見ていたけど、石田さん自身は否定していたみたいだね。」
「若くして、お亡くなりになったようです。」
「やっぱり、顔はインパクトが強く、鑑賞者を現実に引き戻すパワーがあるんだよなぁ。石田さんの訴えたいことは、老若男女にビシバシ伝わる。特に、あの何とも言えない表情で語られちゃうと、世界がグレーに見えてくる。もし、今生きていたら、どんな作品を発表していたか、気になる一人だね。」
「尾崎豊や山田かまち同様、夭折の天才たちは、輝き方が半端ないですもんね。その先が気になるけど、自分の終わりを知っていたからこその表現だったとも思えてくる。」
「クワヤマダくん、山田かまちを知っていたの?」
「知っていますよ!BOØWYの氷室京介と同級生だった、高崎の夭折の画家ですよね。高校時代、エレキギターで感電死した後、膨大な絵や詩がベットの下から出てきて、今では美術館もあるんですよね。」
「BOØWYのMORALは山田かまちさんのことを詩にしたと言われているけど、真相は分からない。天才の周りには天才が集まるっていうのは、本当かもね。」
「ダイラさんの横には僕がいますもんね!」
「クワヤマダくん、いいね~。」
「石原慎太郎の少年時代のスケッチも見たことありますけど、天才ですよね。自画像なんか、10代の子どもが描く許容量を超えていましたよ。あんな、10代がいたら、やばいですもん。でも、あの人は、画家にはならなかった。小説家、映画監督、政治家と、顔を変えていった。」
「そこが分かれ道なのかもしれない。自分を変えるのも才能の一つで、やっぱり凄いことしちゃうと、そこにしがみつきたくなるのが、人間の性。でも、次に行くためには、そこを打破しないと、行けないんだよね。かなぐり捨てる勇気みたいなものがないとなぁ。」
「そのタイミングとかも、見極めるのは難しいですよね。見極めも才能の一つなのでしょうか。」
「オレは、捨てなくてもいい場合があると思っている。苦しいまま突き進むのもアートの一部だし、そういう表現者がいても面白いじゃん。」
「顔を変えずに、心を変えるっていうのもありですよね。同じものをつくっているようで、作者の心境は日々変化する状態ですね。」
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