第44話 ネジ式とフェノロサの侘び寂び

って、西洋文化崇拝の時代風潮の中で見捨てられていた日本美術を高く評価した点で、偉い人だと思うよ。」


牛久の大仏を見に行ったついでに、ダイラとコウジ、アレクサンダー空海くんは、鎌倉の大仏の前にいた。


廃仏毀釈はいぶつきしゃくですよね。江戸時代、幕府の宗教政策であった葬式仏教と檀家制度による国民負担に対して、疑義が持たれるようになっていたし、明治時代、神仏分離令や大教宣布(神道第一主義)、西洋文化への憧れから、仏像がダサく見えちゃったときがある。」


「フェノロサがいなかったら、ウルトラマンは存在していなかったかもしれない。」


「ダイラさん、それは飛躍し過ぎだと思いますよ。でも、一理ありそう。」


「フェノロサは、岡倉天心を連れて、法隆寺夢殿の秘仏・救世観音像を開扉させたんだよ。日本人の心が、から離れていたときに、やっぱりこれはいいじゃん!!って振り向かせた功績は大きい。」


「かっこいいフェノロサがいい!って叫ぶのと、サッカープレミアリーグのどこかの偉い西洋人監督が、岡崎がいい!と叫ぶのが似てる気がします。」


「泥だらけで(ほこりまみれ)、かび臭く、たいらい顔族の物体にフェノロサっていうネームバリュー、付加価値をのせたことは、その後の日本美術の動きを活性化させましたよね。」


「ところで、空海くん、日本の子どもたちの中で、絵を学ぶときに、ある方式に従って教育されていることがあるのを知っている?」


「ぼ、僕は、父からギュウちゃん式を伝授されました。」


「ははは!あまり影響を受けていないように見えるけどね。」


「ダイラさん、それは、サカイ式とか言うやつですか?」


「そうそう、サカイ式、キミコ方式、クモン式があるんだ。」


「クモン式は、違いますよね。僕の友人はクモンで苦悶していました(笑)」


「ある一定の法則で描くんだ。指定された通りに手足、顔を配置する。そうすると、日本人体彫刻の半抽象系バージョンみたいな絵になる。」


「細川宗英さんや加藤昭男さんの彫刻は好きですけど、あんな感じですか?」


「もっとエグイ感じの絵になるけどね。日本美術はいいね!っていう風潮の中、ちょっと侘び寂びのている、軽いホラー的な作風は、うけるんだ。」


「でも、個性のある子どもたちに、方式を伝授するのは、いかがなものかと・・。」


「そういう反発もかなりあるみたいだけど、教育県と言われていた長野県なんかは、〇〇式を排除したくせに、小学校の図工コンクールでは40年間、ヘチマと私というテーマで、巨大なヘチマを抱える不思議な顔をした小学生の絵がずらっと並ぶらしいよ。ヘチマ式だよ。」


「ヘチマで40年ですか!伝統芸能ですね!」


「俺たちも、自由にやっているつもりでも、無意識の中で〇〇式が存在しているかもね。」


「ダイラさんは何式なんですか?」


「おれは、式」


「あの漫画も、シュールで侘び寂びですもんね。アーティストで影響を受けた人はかなりいますよね。」


「コウジくん違います、作品でよく使う、ネジの方です・・・」











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