第43話 光の国(M)と天童節
老人力は赤瀬川原平から、
頻尿の回数が多くなることで、老いるショックを感じ、物忘れで嫌なことを忘れる老人力は日本中の高齢者に勇気を与えた。
老いもブームと捉えれば、前向きである。
人生には4回のカイジュウ期が訪れる。
幼少期の怪獣期、成年期の快充期、老年期の介住期
怪獣ゴッコに夢中になっていても、見てくれが可愛いく許される子ども時代の、怪獣期
他者を求め合い、これが全てと盛んに誤解する、快充期
偉そうにしていても、介護が必要な介住期
オプションとして、容姿や態度が真の怪獣に寄ってくるシン怪獣期がある。
シン怪獣期ともなると、老人力では片付けられない、真の強さがある。
ヒーローに、簡単には負けない存在感。
★
天動説は、古代、シン怪獣期の人々の迷想であるが、ダイラはどこか懐かしくシンパシーを感じていた。
光の国(M78星雲)を追い求めていた幼少期、事実や科学を捻じ曲げる、オカルト情報誌ムー(M)の言い切りのパワー。
自分が世界の中心と思い込む輩が異常に多い、ムサビ(M)時代。
超・自己中心的空間。
あぁ懐かしい・・。
子どもは、自分の世界しか知らないので、天動説だ。自分を中心に世の中が動いていると考えている。
成人になり、社会に出る頃には、地動説が理解できるようになる。自分が社会の歯車として回されていることに気付くからだ。
このエッセイを読んでいる人のほとんどは、日々、社会にぐるんぐるん回されている存在なのではないか。
老年期に入り、介護や介助をしてもらうことが増えると、天動説的な考え方に戻ることが多い。自己中心的な考え方が強くなり、子どもになる傾向がある。
ダイラは、アーティストは、シン怪獣期に向かって生きる方がかっこいいと考えていた。
地動説ではなく、天動説でぐいぐい押していく天童よしみ
容姿も態度も真の怪獣になることで、切り拓かれる創造世界があるはずだと考えた。
岡本太郎、横尾忠則、葛飾北斎、草間彌生、高齢になればなるほど、シン怪獣化してくる。世に残る作品をつくるアーティストは、高齢になるほどいい仕事をする。シン怪獣としての魅力、作品の要介護度が増し、周囲は毒ガスに侵される。
★
ダイラは、特殊照明作家として活動する最中、地動説をテーマにした作品を制作し個展のため準備をしていた。
太陽を中心に地球が回る作品だ。
しかし、我儘で自己中なシン怪獣たちの存在が頭をよぎり、展示1週間前に、天動説をテーマにした作品を急遽制作した。
地球模型には太く硬い棒を突き刺し固定し、その周りに太陽を回した。
世界をブンブン回すぞという、強い意思表示でもあった。
ダイラは、光の国(M)に舞い戻ってきた。
世界の巨匠たちは、自分が世界を回わすことで、あまねく輝く星たちの栄養を吸収し、大地に深く根をはり、巨大な存在になれることを知っている。
シン怪獣期の充実に向けて、地球にダイラの柱が突き刺さった。
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