ダイラソーの夢
第41話 超芸術の後ろメタファー
「こんな巨大なもの作ってどうするのかね。」
「もし、この世に仏教が無くなったら、この牛久の大仏は、トマソンになりえるってことですよね。」コウジは言った。
※超芸術トマソンとは、赤瀬川原平氏と美学校の生徒たちで考えられた造語。語源は、プロ野球・読売ジャイアンツに2シーズンだけ在籍したゲーリー・トマソンから。全くの不発であるにもかかわらず四番打者の位置に据えられ続けた。空振りを見せるために四番に据えられ続けているかのようなその姿が、ちょうど「不動産に付着して(あたかも芸術のように)美しく保存された無用の長物」という概念を指し示すのにぴったりだったため、名称として採用された。
「トマソン?」アレクサンダー空海くんは不思議そうな顔で、牛久の大仏を見上げた。
「モアイ像を見る感じに似ているかもしれないね。巨大さ故に、何か意味があるんじゃないのかと、見る側が勝手に想像するみたいな。」
「地球に初めて来た異星人がいたとしたら、悩むでしょうね。世界で一番デカい、銅でつくられた物体は何を意味しているのだろうかと。」コウジは少々冷やかした。
「2001年宇宙の旅(1968年SF映画)に出てきた、モノリス的な不思議さはあるかもしれない。」
「人類の滅亡を誘引した物体であったと結論付けされたりして・・。」
「多分、牛久の大仏を作った人たちは、後ろメタファーがあると思うよ。」
※後ろメタファー”(後ろめたさという感情を象徴する概念)みうらじゅん氏の造語
「作ったからには、布教を進め、やり切らないと(元を取る)まずいんじゃないかって。総工費80億って書いてありますよね。でも、その割にあまりメジャー感がないのはなぜでしょうか。」
「太陽の塔は、6億でしょ。維持費を考えたら、牛久の大仏を超えちゃうかもしれないって考えると、元を取りたくなるよね。何なら、日本中のアーティストは太陽の塔由来だよって言いたいくらいじゃない?でも、それだけのパワーは太陽の塔にはあるけどね。」
「海外勢が牛久の大仏を見たら、シンプルに奈良の大仏よりデカいんだから、日本で一番の大仏は牛久ってことになりますよね。一層のこと、メジャー感を押し出すために、実は草間ヤヨイ作とか言ってみるとか。親戚界隈を手繰り寄せたら、意外と繋がっていたりして(笑)。仏像をよく見ると、細かい点が散りばめられているとか。夜になると、点が発光するとか・・。」
「それだったら、オレが、点の穴を開けまくって、内側から発光させるよ。」
「それは、最高っすね!企画出したら、通るんじゃないですか。発光する大仏出現となって、東スポの一面になるかもですね!」
「東スポより、ム―に掲載してほしいよ。牛久は
アレクサンダー空海くんが初めて笑った。
「大きさって、全てを飲み込む魔力がありますね。」
★
「話は変わるけど、アーティストとして、生き残る人々の特徴として、後ろメタファーを強く持っている人が多い気がする。」
「ハッタリ、ただの威勢、その場のノリで、凄いもん一回作っちゃうと、後に引けないっていう感覚あります。引き戻ろうとした瞬間、後ろメタファーが働いちゃう。せめて、元を取るまでは・・。例えば、パチンコで実質負けが多くても、数回の勝ちに期待して止められないみたいな。でも、アートの場合は、周りも巻き込むから、もっとやばいかもです。」
「確かに、TAROがぶち壊せって言った後に、TARO自身が、サラリーマンになったり、静物画をシコシコ描く作家にはなることは想像しにくい。」
「基本的に爆発物は元通りにならないことが、物理法則です。」空海くんがにやけた。
「でも、物理法則を突き破ることが、もしかしたら、新しい世代の役割かもしれない。爆発物を回収して、復元して、元の鞘に納める作業をするような。芸術は爆発していせんでした!と宣言し直すことで、逆張りとなって面白いかも。」
「もう、どこかのアーティスト集団がやってそうだけどね。ぶちまけたら撤収までがアーティストの仕事だからなぁ。片付けしないと、怒られるもん。」
「何したっていい、どう転がってもいい、自由自在に生きることがこれからのアーティストの姿かもしれないですね。」
牛久の大仏を前に、3人は少し、盛り上がり過ぎた・・。
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