第40話 TAROと有司男のアレクサンダー

岡本太郎(TARO)に憧れたアーティストは星の数ほどいるが、その中でも、TAROの影響を強く受け、周囲から一番弟子と呼ばれたのは、篠原有司男ウシオ(ギュウちゃん)だ。


ギュウちゃんはTAROとは師弟関係ではなかったが、作品のしさや爆発加減は継承していた。


TAROが爆発をシャープでカラフルなムーブメントで表すとしたら、ギュウちゃんは、歪んだ線でさせながら、サイケデリックな色彩で表す。


TAROの爆発理論を咀嚼して、独自の絵画、特異な造形とさせ昇華させたのがギュウちゃんだ。


二人の作品を連作という見方で見ると面白い。


若くしてニューヨークに飛び立ち、町ビルに50年以上住み、現在もバリバリと奥さんと共に制作活動を続けている。


ダイラとコウジは、彫刻科研究室で、ギュウちゃんの作品集を広げていた。


研究室のドアが開いた。


「こ、こんにちは、ぼくは、篠原と申します。」


やたら丁寧な、素朴で伏し目がちな青年が入ってきた。


ギュウちゃんの息子が、ムサビに短期留学してきたのだ。


の息子ということで、ダイラとコウジは緊張した。


ギュウちゃんは、ネオ・ダダイズム・オルガナイザーズというアート集団の一人として、読売アンデパンダン展で大暴れしていた、生きる伝説だった。


ギュウちゃんは、身近なモノをキャンバスに張り付け、カラフルにペインティングをしたり、で、ボクシングペインティングしたり、段ボールを切り張りして巨大なオートバイを作ったりしていた。


息子さんは、ギュウちゃんとは正反対な性格に見えたが、名前にはかなりのパンチがあった。


ダイラとコウジは、TAROの弟子の息子という認識から、見た目は大人しいが、もしかしたら、もの凄いを秘めているのではないかと感じていた。


アレクサンダー空海くんは、誰に対しても丁寧にとゆっくりとお辞儀をする。ハチャメチャなダダイズムの息子とはどうも思えない。


ダイラは、空海くんをと岡本太郎記念美術館に連れて行こうと考えていたが、彼の性格を見て、これは違うなと考えを改めた。


高さだけなら、太陽の塔を超える、を見に行くことにした。



ダイラとコウジはギュウちゃんをリスペクトしたバイクの作品で、空海くんを迎えようと考え、数か月前から準備していた。


コウジは、改造バイクの後ろに、アレクサンダー空海くんを乗せた。


ダイラは軽トラに、同じく自ら改造したバイク(自転車改造)を乗せて、コウジの後ろを走った。


牛久の大仏が見えると、コウジは路肩に止まった。


「空海くん、あれが、の大仏(120m)なんだぜ、サイズはTAROの太陽の塔(70m)を超えているんだ。師匠を超えたんだよ。まぁ、高さだけなら、ブロンズ像世界一位だから、自由の女神も超えてるけどね。」


「お父さんの憧れは、岡本さんです。いつか、太陽の塔を超えるなものを作るんだと息巻いています。僕の学費や生活費は全て、段ボールやアクリル絵の具、キャンバス代に消えました。一人の人生を狂わすだけでなく、周囲の家族にまで影響を与えるTAROさんのエネルギーには感服します。TAROを超えたウシオの大仏は、何とも言えぬ存在感がありますね。」


そう言うと、空海くんは、遠くの大仏に深々とお辞儀をした。


この先は、ダイラさんのバイクで、とコウジが言い、軽トラの荷台から、ダイラがつくったプラネタリウムバイクに跨り、二人は大仏まで走った。













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