第37話 YOSHIKIの色白
市川市立平田小学校出身の、星野道夫さんは、写真家、冒険家、詩人である。
野生のヒグマの生態を追い写真を撮り続けたが、最期はヒグマに襲われて亡くなった。
野生のヒグマは遡上する鮭の多い季節には人を襲わないという、情報を星野さんは信じ、撮影に臨んでいた。しかし、星野さんを襲ったヒグマは地元関係者に餌付けされていたため、人間の食べ物の旨味を知っていたのだ。
ダイラは気球で冒険する星野さんの写真集は何度か見たことがあり、自由に世界中を駆け回る存在に、シンパシーを感じていた。
★
ダイラの後輩クワヤマダは、山奥の廃校になった小学校で、自らの個展の準備をしていた。
クワヤマダは地元住民とも仲良くなり、安全な展示であること、自分はマッチョで強面だが、かわいい像さんを片手に、善良なアーティストであることをアピールしていた。
ダイラはクワヤマダの手伝いに行く予定だったが、この日は、どうしても見逃せない金曜ロードショウがあったため、腹痛を装って翌日の朝に行くと伝えていた。
マジメなクワヤマダは、ダイラ先輩が来る前に、ある程度の作業を進めようと、徹夜で準備をしていた。
深夜2時、集中して作業をしていると、山奥から獣の唸り声のような音が聞こえた。
野犬か何か小動物だろうと思い、気にしないでいると、結構近くで再び唸り声が聞こえた。
冷や汗とともに、もしこの唸り声が、クマだったら、オレはどうなるんだ?という不安が
でもこの鳴き声が本当にクマかどうかも不確かなので、無料動画サイトで確かめようとした。
クマの鳴き声で検索し、クリックした。
するともの凄い音量のクマの鳴き声が、辺り一面鳴り響いた。
あまりにもの恐怖でパニックになり、顔面蒼白になった。
展示用に準備していたスピーカーに、自分のスマホがBluetoothで繋がっていたことを忘れていたのだ。
明くる日、民家から苦情が出たのだが、それは、クマの唸り声の爆音ではなかった。
クワヤマダが不安を紛らわせるために、XJAPANを聞きながら作業していたが、途中、寝落ちし、無意識で切ったはずのBluetoothが再びスピーカーに繋がり、深夜鳴り響き渡っていたのではと予想した。
しかし、地域住民のクワヤマダに接する態度が妙な感じだった。
関係者からよくよく話を聞くと、どうやら、鳴り響いていたのは、XJAPANではなかったようだ。
一緒に働いている同僚の大男CWが、クワヤマダにお勧めした、ちょっとオジサンが聞くには気持ちの悪いアニメソングをスマホに保存しており、それが鳴り響いていたようだ。
クワヤマダは、CWの趣味を悪趣味だと罵った後に、削除しておけばよかったと後悔した。
ヒグマのようなCWニコロされたようなものだった。
マッチョで怪しいとレッテルを貼られたクワヤマダのテンションは下がった。
昼頃、ダイラはひょっこり現れた。
クワヤマダは深夜の出来事、住民からの苦情について、疲れ切った顔でダイラに話した。
ダイラは真夏のもかかわらず、妙に色白(生まれつき)だった。クワヤマダは、XJAPANのYOSHIKIの色白を思い出し、ダイラさんとYOSHIKIは同い年、おもしろい共通点を見つけた~と目視して、後の準備はダイラ先輩に任せて、眠りについた。
「せんぱ~い、おやすみなさい・・。」
「クワヤマダはく~ん~妙に顔赤いけど、お酒飲んでるのなかぁ~。」
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