第32話 ウワサのダイラ①
噂が絶えないということは、スターの証である。
KWYDさん
ムサビに入学したての頃は、ダイラさんの存在が眩し過ぎて、見ないように関わらないしていた。あの強烈なオーラに、飲み込まれそうだからね。あるとき、彫刻科の飲み会で、超合金魂キングジョーについて熱く語っているダイラさんがいた。あの夜は、アートのアの字も出てこなかった。この人は、マジで超合金や怪獣、ウルトラマン、SFモノが大好きなんだと知った。オレも超合金大好きだから、それから親しくしてもらっているし、イメージが180°変わったよ。周りはおっさんたちのおもちゃ好きトークにドン引きだけどね。以降、ダイラさんの手伝いをする度、今何作ってるの?という問いは、アート作品云々じゃなくて、全て、そっち系の話だった。本当は巨大なキングジョーを作りたいんじゃないのかなぁ。
NGZWさん
あの人の記憶力は凄いんだよ。私が制作した多くの石彫作品の題名、留学した海外の国々のこと、私より詳しいんだから。他人に興味ありません、自分大好き人間がムサビには多いんだけど、ダイラさんは、自分も大好き、他人も大好きタイプで珍しいんだよね。好奇心のアンテナは鋭くて、学生さんのちんぷな作品も、マジマジと観て研究するんだよ。あと、やたら二頭筋の膨らみを気にしていて、暇があれば、腕立て伏せや、バーベルを持ち上げていたよ。二頭筋をつくるために、鉄の制作しているのかなぁと思うときがあったなぁ。
TRMさん
ダイラさんがムサビで先生をやっていたとき、ダイラさんの車で、僕たちの同期の作品を観に富山まで行ったことがあるんです。帰りは僕が途中で運転を交代したんですけど、後部座席から、もっともっとスピードを出して!と
あと、僕みたいにエネルギーが枯渇している学生に刺激を与えるために、ダイラ特別講義があったんです。他の教授や講師の方々は自分の作品自慢に終始したんですが、ダイラさんは、自分が影響を受けた映画を山ほど持ってきて、一枚一枚丁寧に説明してくれました。僕は、ダイラさんの初期の作品や数々の受賞した作品を観たかったし、解説してほしかったんですけど、ほぼ、映画の解説で終わってしまったんです。そこにいた学生たちは、思春期に映画を観てきた教養のある人種ではなかったし、ダイラさんが青年期に映画をレーザーディスクで買い集められていたという文化レベルの高さに、口をぽっかり開けている連中ばかりでしたね。ある意味、最高に記憶に残る名講義でした。
KMSB
ダイラさんが、ムサビの教授をやらなかった理由は、肩書に全く興味が無かったこと。TAROさんの金言で、「心の底から平気で、出世なんかしなくていいと思っていれば、遠くの方でちぢこまっている犬のようにはみえないんだ。危険な道を選べ!枠からはみ出よ」を守っているとか・・。今後、少子化が異常に進むから、日本のために、自分は子どものままでいたいとも考えているって誰かから聞いたことがある。ダイラさんみたいに才能溢れる子どもおじさんがいたら、ムサビ彫刻科の人気も上昇して、志願率も上がるのになぁと思うよね。僕は、ダイラさんがいた3年間に学生でいて本当にラッキーでしたよ。
つづく・・
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