第30話 ダイラダボッチの謎

ダイラは幼少期、祖母が経営していた洋服店で働いていた若い女性店員さんから、興味深い神話のような昔話のような話を聞いていた。


ダイラちゃんが住んでいるところには、の巨人が二人いたんだよ。


「知ってるよ!巨人軍の〇〇でしょ!」


「まあ、それもそうだけど、もっと昔の人だよ。」


女性店員さんは、大学を卒業したばかりで、仕事の合間にダイラと話すことを楽しみにしていた。


「一人はね、洗足池せんぞくいけで、小便をしたダイダラボッチという巨人。」


ダイラも小学校でダイダラボッチの昔話は聞いていたので、イメージは掴めた。


洗足池はダイラの住まいからは少し離れた、大きな池だ。


歌川広重が名所江戸百景で描いたり、勝海舟が、洗足池の景色に魅せられ、別邸洗足軒を建てたりした有名な池である。


あの美しい池がダイダラボッチの便だったとは、子どもながら面白く感じていた。


「もう一人の巨人はね、ダイラの街を構想した渋沢エイイチさんなんだよ。」


「歴史の教科書で見たことある!チョウー偉い人でしょ!」


「この二人には、共通点があるのよ。ダイラちゃん分かるかい?」


ダイラにはこの話のイミが分からず、困った。


「ヒントとしてはね、ダイダラボッチは海岸に行っては、片手で持ちきれないほどの沢山の貝を集め、久ヶ原という場所に食べた貝殻を捨てていた。お陰で片手が異常に長くなったんだ。」


「へー、巨人の割りには、小さな貝が好きだったんだね。」


「もう一つのヒントが、渋沢エイイチさんは、多くの女性と付き合う、モテモテな人だったんだって。お陰で、子どもの人数も片手からこぼれ落ちるほどいたそうよ。」」


多くの女性との間に、子どもは数十人いたそうだ。


「ダイラちゃんの住んでいるところを上空から見たら、どんな風か知ってる?」


「道路がになっているって聞いたことがあるよ。」


「ホタテの貝殻を寝かせたみたいな形なんだよ。ふふふ・・・。」


大人になったダイラにはその女性店員さんが言っていたことは理解できた。


要はスケベな話だったのだ。


子どものダイラは軽くもてあそばれていた。


ダイラの祖母は、は3人目のダイダラボッチになりなさいとよく言っていた。


僕の名前は、と言うんだよ。


そう言っても、なぜか、祖母や周りはイラと濁点をつけて呼んでくる。


ハナコなら、ナコであり、濁点はちょっと嫌だった。


しかし、幼少期から見せていたダイラの神童ぶりから、いつしか巨人となる運命を周囲は感じとり、ダイダラボッチ伝説と重ねていたのだろう。


その後、現代アート界の巨人、としての運命のが、その時の人々の想像を遥かに超えてくるとは、まだ誰も知らなかった。


















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