第29話 I love meとアイロン・マスク
I love me 今だけは辛い塑像したくないよ
I love me 逃れ逃れ 辿り着いたこの鉄工房
何もかも許された制作じゃないから
鉄板はまるで 輝くステージみたい
この部屋は 鉄クズに埋もれた スクラップ場みたい
だから俺は 壊れたグラインダーのような音で
ウィーン、ウィーン、ウィーー-ン
きしむベニヤの上で、鉄板を持ち寄り
やさしく重ね 抱き合わせれば
それからまたオレは目をとじるよ
細い溶接棒がしけてしまう前に・・・
ダイラは尾崎豊とは同じ年だった。
表現する世界は違うが、鬱屈した思いを吐き出し、自由になりたいと願っていた。
塑像(支配)からの卒業・・・
デッサンからの卒業・・・
2年の後期課題から、好きな素材コースが選べた。
ダイラは迷うことなく、鉄表現コースを選択した。
半地下のようなアトリエに、割と立派な鉄工房があったが、鉄に詳しい指導者が少なく、無法地帯となっていた。
鉄を選択する学生は、教授陣の束縛から解放される傾向があったことは、ダイラの創造力の爆発を誘発させた。
★
2022年イーロンマスクは、垂直着陸する、再利用ロケット、ファルコン9を完成させ、宇宙開発競争でトップを走る。
アイロンマンとなった当時のダイラは、その後、自分のマスクとなるドームのないプラネタリウムをムサビの鉄工房で発明する。
そして、制作したものはスクラップにせず、再びアトリエに戻し(垂直着陸)再利用を繰り返す、環境アート、エコアート、SDGsの先駆けだった。
周りの仲間は、つくっては壊しスクラップの連続だったが、ダイラの不思議なところは、図面が無くても作品をイメージのみでつくり壊さないところだった。
しかも、つくった作品の完成度が異常に高く、周囲を驚かせた。
鉄に詳しくない教授は、塑像が苦手なダイラがつくれるのだから、他の学生もできるものと思い様子をみていたが、ダイラしかつくれない形態があることが分かった。
特に、球体を意図も簡単につくり上げてしまうところが、謎だった。
鉄板を曲げるためには、R計算が必要であり、かなり難しいはずなのだが、ダイラは感覚のみで曲げてしまい、それが、うまくいってしまうのだ。
鉄をいじらせたら天才児、アイーロンマスク・ダイラという異名がつけられた。
しかし、ダイラの真骨頂は、鉄だけでは無かった。
鉄だけで終わる作品にはしないというポリシーがあり、光を用いた表現をミックスさせていく。
固定概念、常識からの卒業・・・
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