第23話 シン小平駅のメーテル

ダイラが反抗期真っ盛りの中学2年生の頃。


定期テストで不振が続き、親や学校の担任から進路について、問いただされた時期があった。


「チョウゴウキン(超合金魂)を買って作るのはあなたの自由ですけど、あなたは将来のことを考えて、学校の授業や勉強に取り組んでいるのですか?」


「・・・・・」


母親にそう問いただされても、性格的に夢中になりだしたら止まらないダイラは、超合金作りに時間を費やし、将来とか勉強とか考える余裕がなかった。


ある日、少年キングのアニメ特集を読んでいたら、アニメ銀河鉄道999の美術監督がという人物で、美大出身と書かれていた記事に目が止まった。


「そうか~、オレが見て育ったアニメや特殊映画の中には、ウルトラマンやバルタン星人のデザイナー成田さんだけじゃなくて、美術監督の窪田さんがいるんだな。その美大とやらを見に行ってみてもいいかな。何だか、面白そうだし、大学を見に行ったら、親や先生も安心するかな。」


ダイラは、美大出身のデザイナーにシンパシーを感じていた。


そう思ったらすぐに行動に移すのがダイラの性分、学校をさぼって、電車で美大まで行くことにした。


早朝、自宅の最寄りの駅から満員電車に乗り込み、美大に一番近い新小平駅まで乗り継いだ。


新小平駅に着き、ホームを降りると、黒い帽子を被った女性がベンチの脇に倒れていた。


中学生ダイラは、一瞬焦ったが、勇気を振り絞って声をかけてみた。


「あの~大丈夫ですか・・・。」


近くに寄ると、嗅いだことのある匂いがした。爺ちゃんが飲んでる酒の匂いと同じだった。


その瞬間、その女性はもの凄い勢いで、吐いた。


ダイラはのけ反った。


その時、駅員が駆け寄ってきた。


「あーあー、迷惑だなぁ。美大の学生だな。朝まで飲んでいたんだろう。酩酊めいていしてるわ。君は、中学生か?この人は大丈夫だから、君は学校へ行きなさい。」


ダイラは?と聞き間違えた。


頭が混乱していた。


銀河の中を走る999とメーテル、そして鉄郎(ダイラ)のイメージが重なった。


「確かに、背が高く、長い金髪、こんな美しい女性が美大にいるのか!また、会ってみたいな。」


ダイラのたくましい想像力は、酩酊女性(メーテル)の大量の吐物をに見立てていた。


朝まで飲んで、駅で倒れるような学生生活、何だかスリリングで凄そうだな。そんなファーストインパクトだった。


この後、更に人生(進路)を決める大きな出来事に遭遇することになる。














  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る