第16話 もう獣学生(ユニバーサルシステム)

「ダイラさ~ん!」


美大祭の学生屋台から、ダイラと彫刻科研究室に入れ替わりで入った、の姿が見えた。


「今年は、男神輿は中止なんですよ~。うひゃひゃ~。」


シマダは頭に乗せていたカラーコンを振り落とし、落ち武者のようになった頭部を見せてきた。


シマダはいつも酔っているようだったが、サイダーしか飲めない。


「きょねん、酔って暴徒化したが、他学科の教授に頭突きをしてしまったんですよ。で、モガちゃん(モガミ教授)の逆鱗に触れちゃったってわけです~」


普段から、他学科に謝罪をしていたモガミ教授の悲痛な表情が想像できた。


テラムラオはすでに坊主だったため、下の毛とすね毛を同胞たちに剃られ、頭突きをしてしまった教授に謝罪に行った。元来無気力な雰囲気を漂わせるその不気味な風貌に、教授はになったそうだ。


「あの、テラムラオがそんなことするの?」


「あの人は、普段は死んだ魚のような目をして、無気力オーラが出まくってるけど、やるときはやるんです。彫刻科のと付き合っているんすよ。」


「チオミと!?彫刻科の男どもはクズだ!と震撼パーティーで吠えてた酒豪の子でしょ!」


「チオミのハートをくすぐるさがあのテラムラオにはあるんですよ。」


「おーい!ジマダー!」


怒鳴り声の主は、オガダザルトル教授だった。


「お前、鋳造の準備をしておけっていっただろ!いつもしておって、しっかり働いてくれよ!」


「すんまそーん!ダイラさん、また後で・・」


シマダはサイダーを飲み干し、鋳造場へヒョコヒョコと戻っていった。


美大祭では、屋台の他に学生たちの様々な作品が展示されていた。


ダイラが学生だった頃にもあったような人体具象の作品もあれば、理解を越えたエキセントリックでシュールなものもあった。


彫刻科の作品も様変わりしていた。2号館ビルの屋上から、シンセサイザーの生演奏に合わせてビニールでつくられたマネキンが無数に落ちてくる作品、高さ10メートルを超えた、ガンダムの下半身のみの作品、巨大なお面群の周りを耕運機にまたがり回る作品・・・


美大の総務課には、彫刻科のOBがいた。


彫刻科から総務課へ奇想天外な就職をしたさんは、サラサラヘアーをかき上げ、笑うとヨン様を彷彿とさせる人物だった。


事務室でしながら、彫刻科の無謀な作品群の設置の申請を許可してくれていたという噂があった。


「ダイラさ~ん。ヒマなんで、また来ちゃいました。」


「ヒマじゃないんだろ。勤務中でしょ。」


「いーの、いーの、ダイラさん、地球はっているよね。ダイラさんがいなくなった美大は、何かを欲しているように見えるんです。学生たちが、次の彗星は俺だと言わんばかりに、光を放っている。地球があと何回か回ったら、もフツーの社会人になるんだろうけど、この瞬間は、ダイラさんの光源の一部みたいに輝いていて、美大っていいなぁって思うんですよね。」


ダイラは、銀河系の中でグルグル回る地球や無数の彗星たちが頭の中に浮かんだ。


星々は激しく動き回っているはずなのに、音が全く聞こえない不思議さが、この美大の物語と似ているように感じた。


どんなに美大で暴れようとも、人間社会はとも動かない。


こんながあったっていいじゃないかとダイラは感じ、ユニバーサル・システムの制作を始めた。















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