2024
新年
明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
僕は一人で街を歩いていた。いや、町か、村か、集落か。どれが適当だろうか。人はそんなにいない。本当に、小さな集落。目の前には海があって、真後ろには山がある。細い道路しか通っていない。集落の中心には、教会があった。異世界情緒というかなんというか。すばらしい体験だった。今からいろいろと罪を重ねてしまうだろうから、将来は神様の前で告白するのもいいのかもしれない。
そこには父の友人がいるらしくて、そこに泊めてもらったんだ。ずーっとお酒を飲んでよもや話をしているものだから散歩に行かせてもらった。
そこの集落のシンボルという教会には、三回行った。一度は、昼。二度は、夜。三度は、翌朝。夜はこの季節ということもあってたいそうきれいな、イルミネーションをしていた。僕からしたらただの綺麗な建物。キリスト教徒からしたら信仰の中心である神聖なところ。その捉え方の違いが、なんだかひとり黄泉の国にでも連れてこられたのかと思って、むず痒かったり、心細い思いをした。夕暮れ後すぐ、教会が閉まる直前に行ったときなんかは、一人きりで、どこからか帰れないような気がしていた。そこの集落では8割くらいの人が信者さんらしい。日本全体で1%くらいなのだから、とても変わった場所であるということがわかる。小山を登るとすぐに神社もあって、ますます不思議な場所だなと思う。
僕の幼稚園はキリスト教系の学校だったから、毎週教会に行っていた。今の高校もそうなんだけど、教会には行ったことがない。その集落の教会は畳敷きで、本当に不思議な空間だった。夜、ろうそくだけの光の中で、正座で、30分くらい、ただ十字架を見ていたんだ。
さっきから教会、教会、と言っているけれど、僕がこんなに惹かれているのは、何より集落が魅力的だったんだ。和洋折衷を体現していた。教会が集落に根付いている。まあ、そりゃそうだろう。だって、集落の住民の多くが信者さんなのだから。生活の一部だろう。教会のすぐ近くの漁港から、漁船がでていくというのはなんだか不思議なような気がしないか。そうだ、異国のような街を見た。
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