第一話
「はぁ……」
口から勝手にため息が漏れる。だってアナタ、
「エレン様! 今日のお召し物も素敵ですわ! どこのデザイナーの作品ですの?」
「エレン様! こちら先日のお礼の品ですわ! お気に召せば良いのですが」
「エレン様」「エレン様」「エレン様」!
あー! もう、うるさーい!
パーティーが始まったら壁の花決めとこと思ったのに、下がる間もなく寄って集って「エレン様」コール! 社会人スマイル浮かべながら対応した私偉くない?! 私は静かに過ごしたいのにそれを許さないエレン様コール。もういい加減ウンザリ! 私を一人にさせてーー!!
手に持ってる扇子をへし折りそうなくらい握り締めていたら、取り巻きの一人が何かに気付いたように途端に声を小さくしてある方角をチラ見した。何なに? 何があるの?
「見てくださいまし、ステラ嬢でしてよ」
「あら、本当。前回の舞踏会でエレン様に恥をかかせておきながら、まだ顔を出すなんて、さすが、お顔の皮は厚いようですわね」
ステラ嬢……ステラ嬢……はて。聞き覚えはあるわね……
チクチクチクチク、ポーン。
クロード男爵家の長女で、品行方正。甘い笑みに囚われた男性多数。あらヤダ、正統派ヒロインじゃん。皆さん私じゃなくて、ステラ嬢のところ行った方が良いのでは? 爵位が低いからダメ? そんなー。生まれに貴賎はないでしょうに。私を見てご覧なさいな。爵位だけ高い悪女だよ? ステラ嬢と前回会った時はワインをぶちまけたんだったっけか。自分のドレスにケチつけられたからって。それくらいでカッカしなくても良いだろうに、アホらしい。でもまぁ、正統派ヒロインには正統派ヒーローが付き物で、確かエレン——私か。の婚約者が現在ステラ嬢にベタ惚れとの噂。取り巻き達から嫌でも聞こえてくるそれは本当らしく、前回もエレン——だから私だ。をきつく叱り付けてたっけなぁ。婚約者の前で堂々とした浮気ですか。勇気あるなぁ。えーっと、確かお相手はエドワード皇太子殿下だったはず。あー! もう! 横文字多すぎ! ついでに言うと、エドワード皇太子殿下が皇太子になれたのは、エレンがどうしてもエドワード皇太子殿下と結婚したいからと駄々を捏ねたかららしい。王位継承権はあったけど、下の方だったんだって。一方私は皇室を支える経済力を持った公爵家の長女。向こうからしてみたら願ったり叶ったりな訳だ。で、いざ婚約って時に登場、ステラ嬢。婚約はしたけど、エドワード皇太子殿下はステラ嬢にメロメロと。どんなハーレクイン小説だっつーの。
「エレン様、宜しいんですの?」
「騒ぎ立てるほどのものではありませんわ」
いや、本当に。騒がれたらエドワード皇太子殿下がヒーローなので颯爽と現れステラ嬢を助けるんでしょ? 目に浮かぶわ。とにかくここら騒がず、静かに過ごしましょ。
あー、もう嫌。パーティーとか二度とごめんだわ。
悪役令嬢なんて真っ平御免です! 月野 白蝶 @Saiga_Kouren000
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