第21話 ご褒美は突然に

はれて旦那様公認のお勤め人となったわたしは、旦那様が帰った後もほぼ毎日お屋敷に通いラモン家の食卓係をつとめた。


この世界でも、子供たちは周りの大人のお手伝いをしてお小遣いを貯める習慣があって、わたしのお給金の8割は家族の食費に消えていったが、母は残りの2割をわたしの自由にさせてくれた。

1割をわたしの小さな菜園用の種や、道具を買うために積み立てて、もう1割はギルドに登録してギルドへ預けて貯金している。

そしてなんと、旦那様はお茶会のお礼として特別給金をくれた!


ーーなんて素敵な旦那様!


特別給金を握りしめたわたしは夕食前の時間に帰宅した。


「ただいま。かあさん、あのね、この間ラモン様のお茶会が成功したから特別給金をもらったよ!」


特別給金を持ち帰ったわたしに、母の眼はキラリと輝く。受け取ったお金を大事そうに抱え、ふと考えるように天井を見る。


すこしして、深緑の瞳にがこちらに向いた。


「イリ、毎日頑張っているみたいだし、今度一緒に市場に行きましょうか。」


「ほんとー?行ってみたい!でも、市場に行くのは危ないからダメだって•••。」


すると、ふふっと母の口元が弧を描く。


「あんたの“おじさん”たちがね、イリに何かしてあげたいんだって。きっと、喜んで護衛してくれるわ。」


「“おじさん”たち?」


「そうそう。イリ、自分で種や食材を選んでみたかったんでしょう?」


「うん!選びたいの!行きたい!」


勢いよく手を挙げて宣言するわたしに母は、目を丸くする。


「イリがそんなに喜ぶなんて、初めてかもしれないね。じゃあ、明後日の朝市の日に一緒に行きましょうか。」


「かあさん!ありがとう!」


「はいはい。ちゃんと言うことを聞いて私たちから離れないのよ?」


「はーい!」




ーーやったあ!初めての市場だ!

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味覚音痴なわたしの魔力使い 森 未来 @munita

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