第19話 デザートは幸せの味
「これまでの料理はイリちゃんが考えたお料理なのよね?お母様とかではなく?」
「はい。わたしが家族のために考えた料理です。道具がないので、このデジ料理などはこちらが初めてです。」
「まあ。。。」
夫人は少し考えるような仕草をして食事を中断する。
ーーどうしたんだろう、やっぱり料理が突飛すぎたかな。
わたしは少しその沈黙が怖くなって話始める。
「今日は多くの品数を召し上がっていただきましたが、お腹は満たされましたでしょうか?」
「イリちゃんのおかげで、もうお腹がいっぱいだわ。生野菜を食べると聞いたときは、少し不安だったのだけど、お味も美味しかったもの!」
話題の転換に気づいてはいるのだろうけど、優しい夫人は笑顔と安堵を感じる笑みを浮かべて、感想をくれた。
ーーふうっ、ひとまず貴族を怒らせたりすることはなかったみたいだ。よかったよー。
「えっと、実はお食事の最後のお口直しに簡単なスイーツを用意しておりましたが、召し上がりますか?」
キラッと親子のルビーが輝いた。
*
「最後の一品は、ミルクプリンのフルーツソースパレットです。」
まずお料理を考える時に真っ先に思ったのが、頑張って家族のために栄養の高い食事をとろうと努力するお二人に、大好きな甘いものを食事の最後にお出ししたいということだった。
とはいっても、やはり栄養は大事だし、フルーツからも酵素やビタミンをたっぷりと摂ってほしいという願いがあった。
浅めの大きなお皿に新鮮なミルクとお砂糖でミルクプリンを作って、白いパレットに見立てる。お屋敷にあったフルーツをすりおろして少しだけ蜜を加えて、絵の具にみたててミルクプリンの上に並べる。キウイ・イチゴ・ぶどう・すもも・バナナの5色のパレットが出来上がった。
「これも美しいわ。ほんのり甘くて、爽やかで、美味しい!」
笑顔の夫人の隣でルキウス少年も、ふくふく笑顔だ。
お腹が一杯と言っていた二人だけど、甘いものはぺろりと綺麗に完食してくれた。
ーーふふ、最後にこのデザートをお出ししてよかった。
*
「今日は私のために頑張ってくれてありがとう。美味しかったし、なんだか今日の食事は楽しかったわ。楽しい食卓をありがとう、イリちゃん。」
ーーわあ、なんか、なんか今心がきゅっとした。奥様はなんて言ったらいいんだろう、優くて人を生かすための言葉をくれる方だな。こんな方のためにだったら料理を作りたいって、そう思っちゃった。
「わたしとしては、こんな楽しい食卓でルキウスと一緒に、健康になるための食事をしていきたいと思うのだけれど、これからもお食事をお願いできるかしら。」
「はい。よろしくお願いします。」
こうして、ラモン家とわたしの食卓はこの日から始まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます