第15話 side ルキウス•ラモン 03


「えっと、本当です!家の家族も生野菜を食べるようになって、みんな顔色も体調も良くなりました!」



にわかには信じられない平民の子がいうことであった。だが、それにすら縋りたいと思うほど、国の名医にみせても母の体調不良の原因は分からなかった。同様の症状を持つ者が沢山いるた流行り病や、加齢など色々な解決策のない診断がされていた。



「そうねぇ、わたくしはそもそも野菜があまり得意ではないのだけれど、食べられるかしら。」



「奥さま。体に良いものは不味いものです。」



「うふ。確かにそうかもしれないわ。薬草や薬湯もあんなに不味いのですものね。」


母は笑った。


対するイリは、大人が子供を宥めるような、そんな話し方。貴族に対してこんな物言いが許されるわけがないのだが、じぃ、いや執事のランスも咎めず、考えこむように話を聞いてにいた。



「ねえイリ、わたくしはね、まだ幼いルキウスの為にももう少し長く生きたいと思っておりますの。このままでは弱るばかりですもの。」



突然の発言にみな沈黙した。



「あなたの家族が元気になったという、そのメニューを我が家にも教えてはくれないかしら?もちろん、報酬もお支払いするわ。」



「え?えっとー。」



さすがにイリも驚いたのか、返事に困っている。




「わたくしの体調の改善は気にしなくて良いわ。ただ、のぞみを持って足掻いてみたいだけなの。」




「ーーーはい、かしこまりました。」








ー望みを持って足掻いてみたい。

いつかイリの店でした、当時の思い出話。

この言葉にイリは心が動いたと言っていた。



「ルキって幸せ者よね。」



そう言ってイリは笑う。

本気で私を幸せ者と、そう思うのは、この世で私とお前だけだろう。



心に温かさが灯る。



おかげで、その日の夕餉はとても美味しいものとなった。

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