第7話 弁明と催促
後日聞いたこの男の弁明によると、少年=つまりは少年だったこの男は、手を握り母の症状を改善させたわたしを「癒しの使い手」だと勘違いしたんだという。
その手が離れれば、母の治療が妨げられると。
「だから、しょうがなかったんだ。」
これが男の弁である。
「しょうのないひと。癒しの使い手だなんて偶像のようなものなのでしょ?本当に信じていたの?」
「ーーー。」
沈黙は応え。
この男、ルキウス•ラモンが押し黙ってしまえば、会話はそこまでとわたしは知っている。
実際にはあの出来事のあと、執事のランスさんはわたしたち姉弟を館の玄関ホールに招き、手助けへの感謝の言葉と謝礼をくれた。
どうやら隣の敷地の子供だと知っていたようで、そのまますぐに帰してもらえた。
はじめて足を踏み入れた貴族の館のその美しさに、昔見た西洋映画みたいだと思ったことを大人になった今でも覚えている。
わたしにはとんと、縁のないものだとも。
このとおり、この男とは縁が繋がってまた再会することになるのだけど•••。
「ーーー。」
葡萄酒の残り半分をぐっと飲み干し、こちらにすっと押し出してくる。
さあ、お料理の催促がきたわ。
ーー覚悟なさいっ!
ーー本日の夜ご飯定食は栄誉満点なんだからっ!!
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