第6話 練り消しデスゲーム
俺とアリッサが宿から出るとすでに宿主の姿は見えなくなっていた。
宿主が宿を出て右側に走っていたのは見えたので、同じ方向に走りながら、俺はじいさんを呼んだ。
「おい!じいさん!」
俺がそう叫ぶと、例の如く椅子がガタッと動く音がした。
「な、なんじゃ!?世界がリセットされたのか!?」
「だから寝るなって言ってるだろ!森って何処だ!?案内してくれ!今宿から出た所だ!」
「森か?ああ、任せい。宿から森までそう遠くはないはずじゃ。えーっと、確か…」
しばらく沈黙が続き、やがてヘルニアじいさんは明るい口調で言った。
「いや〜、普段決まった場所にしか立ち寄らんから、それ以外の土地鑑は持ち合わせておらんかったわい、ほっほっほ」
「やっぱりな!絶対言うと思ったぜ!アリッサ、お前は知ってるか?」
「やっぱり…?」と、何故やっぱりと言われたか分からず、戸惑っているじいさんをよそに俺はアリッサに聞いた。
「ワターシに任せるデース!バッチリ覚えてるデースヨ!ナンセそこを通ってきましたカラネ!」
ん?多少疑問に感じたが、今は森に急ごう。
アリッサの案内で森に着いた俺達は、何の策もないまま奥へと進んでいった。
昼だというのに薄気味悪いこの森は、同じような景色が広々と広がっていて、自分の位置が分からなくなりそうだった。
「ミスター宿主〜!!ミスターレイ〜!!どこにいるデースカ〜!!」
「お、おい…あんまり叫ぶと獣を呼び寄せるんじゃないか?まだ時間はそんなに経ってないから多分近くにいるだろうし、獣に見つかったら戦える奴がいないぞ?ここは、静かに2人を探して…」
そう言ってる途中で俺は近くの草むらがガサッと動くのが見えた…と、その瞬間、草むらから何かが俺目掛けて飛びついてきた!
「うぇぉぁああああ〜!!!!」
デスゲームで殺される前の人間みたいな叫び声を上げて、俺は倒れ込んだ。
飛びついてきた何かは俺の顔面にへばりついてた。
「うわぁああ〜!!やべー!!死ぬぅ〜っ!!!」
そう叫んでパニックになっている俺からアリッサはへばりついている物を取った。
「雑魚モンスターデース。落ち着くデースヨ。」
アリッサは、何かネバネバしたものを持っていた。
俺は、胡座をかいて座り、あくまで冷静を装いながら聞いた。
「すまないな、アリッサ。ところで、それはなんだ?もしかして、スライムか?」
「コレは、練り消しデース。世界中に生息する1番弱いモンスターデース。」
練り消し?1番弱いモンスターといえばスライムだと思っていたが、この世界は練り消しらしい。なんだそのオマージュ作品みたいなずらし方は。
「サッサと行くデースヨ。早く2人を探すデース!」
アリッサは、そう言って進み始めた。
そうだな、と俺は答えアリッサに続いた。
さらに奥に進むと突然「うわぁ〜!!」という少年の叫び声が聞こえてきた。
俺とアリッサは顔を見合わせて後、再び叫び声の方を向いてそちらに向かって走り出した。
叫び声の方に向かうと開けた場所に出た。そこには腰を抜かした1人の少年とその前方に、禍々しいオーラを纏った巨大なイノシシみたいな動物がいた。
「レイ!」と叫んで宿主が反対側の草むらをかき分けながら現れた。
「なんだ?あのイノシシ…?なんか、黒いオーラが…。」
「アレは、大人ウリボーデース!でも、あんな黒いオーラを纏ってる個体は初めて見マーシタ!」
それイノシシでよくないか、とツッコミたかったが今はそんな状況ではない。一刻も早く少年を助けないと!
俺達が動こうとした瞬間、大人ウリボーは少年に向けて走り出した。
俺も宿主もそれと同時に少年の所へ走り出したが、間に合いそうになかった。
まずい…!どうすればいい…!
その時、俺の後ろから大人ウリボーに向かって、勢いよく何かが飛んでいった。
アリッサだ。
アリッサはその勢いのまま大人ウリボーの顔に飛び膝蹴りを喰らわせた。
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