第2話 ヘルニア大魔導師
スキル鑑定の為、俺は水晶に手をかざした。すると、水晶は少しばかりの輝きを放ち、大きくデバフという文字を浮き上がらせた。
デバフ?ってあの弱体化って意味のデバフか?
「君のスキルはデバフのみじゃな。もっと、複数個のスキルを持ってる人間もいるのじゃが、君は一個のみじゃ。一個じゃ。」
「一個一個うるせぇよ!一個でも強けりゃいいじゃないか!おい、じいさん、デバフってどんなスキルなんだ?」
老人は、顎に手を当てて、少し考えた後に答えた。
「敵のスキルを少しだけ弱体化する能力じゃ。どちらかと言うとサポート系のスキルじゃな。これ一つでは敵を倒せん。」
俺はがっくりとうな垂れた。なんか、こっちの世界でもあまり上手く行きそうにない。サポート単体でどうやって戦えばいいんだ…
「まぁ、良いではないか、サポート単体でも。敵にダメージを与えるだけが戦いではない。デバフが使える仲間が居ればきっと便利じゃぞ〜。」
「あんた俺のこと伝説の勇者として呼び出したんだよな?なんだ、デバフしかできない勇者って。ただの陰湿な奴じゃねぇか。」
「そんなこと言われてもどうにもならん。それでやるしかない。」
そう言うとじいさんは水晶を一瞬で消してから、パンと手を叩いた。
「スキルも分かったことじゃし、早速、町に行って、今日泊まる宿を探して来なさい。見つからないと、どっかの家のペットが糞尿垂れ流したかもしれん町の地べたで夜を明かすことになるぞ。」
「嫌な言い方すんな!それならここに泊めてくれればいいじゃねぇか。もともと、あんたのせいなんだから。」
「この小屋はワシ一人分の生活スペースしかない。それにワシは夜は落ち着いて過ごしたいのじゃ。他人がいたら落ち着かん。」
「ああ、そうかい!じゃあ、金はくれよ。町に行ったって金ないと何もできないだろ?」
「そうじゃな、小遣いを渡してやろう。」
そう言うと老人は、ポケットからジャラジャラと音のする小袋を取り出して、ほれと俺に渡した。
袋の中身は大量の銀貨で、机の上に出してざっくりと数えたところ50枚ほどであることが判明した。
「おお…結構くれるな。この銀貨の価値はよくわかんないけど、50枚だったら結構するんじゃないか?」
「ああ、銀貨50枚で5000ジャポニカじゃ。」
「5000ジャポニカ?」
「ジャポニカって金の単位か?」
「そうじゃ」
なんだその単位?絶対言いにくいだろ。
「5000ジャポニカあったら何が買えるんだ?」
「5000ジャポニカか?そうじゃな…だいたい町のお菓子屋さんで売ってる栗まんじゅうが4950ジャポニカじゃからそれくらいは買えるな。」
「端金じゃねぇか!50円くらいだぞ、それ!栗まんじゅう一個買ったら50ジャポニカしか残らないじゃねぇか!」
老人は、うるさいなと言わんばかりに指で片方の耳の穴をほじっていた。
「まぁ、日雇いのバイトもあるじゃろうからそれで金を貯めてくれ。さあ!準備も整ったところで早速町に繰り出すんじゃ!君の輝かしい異世界ライフのスタートじゃ!」
「スタートする前から霞んでるんだが、俺の異世界ライフ。仕方ない、とりま行ってみるか。こんなとこにいるより100倍マシだろうから。」
出口に向かって歩き出した俺だったが、あることに気づいてその足を止めた。
「そういえばじいさん。あんた名前は?聞いてなかったな。」
「ワシは世間一般では、ザ・グレート・ヘルニアの名で通っておる。みんなからは親しみを込めてヘルニアじいさんと呼ばれておる。お主もそう読んでくれ。」
「いや、呼びにくいわ。」
親しまれてるのか?それ?
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