第8話

「じゃあ、僕から言ってくね。と言っても、黒月こげつと報告内容はそんなに変わんないかな?合同報告でもいい?」

「ん、りょーかい。」

定例会議の報告は、基本各自がするが、内容が被る場合は合同報告という形でいっぺんに報告することになっている。

「え~と、新しい情報は残念ながらなかったね。」

白月しげつが言う。

「私の伝手つてに当たっているが、今のところは全部空振りだな。無駄足にもほどがあるというものだ…。」

黒月こげつ溜息ためいきをつきながらつぶやく。

「まあ、しょうがねぇな。

―――ってか、お前まだそっちの伝手つてあったんだな。」

「別に全員が私を嫌悪して追い出したわけじゃない。伝手つてはいくらでもある。」

「そうかよ。」

見捨てられてないって、いいよな。

『コウ、もしかして嫉妬しっとしてる?』

『してねぇ。』

『ふ~ん。』

モモはまだ何か言いたそうだったが、それ以上は何も言わなかった。

「それで全部か?」

「そうだよ~。」

「んじゃ、次青月せいげつ。」

「はい。私が集めた限りでは、特にこれと言って特筆すべき情報はありませんでした。元使用人らからの有力な情報もありましたが、調べたところ、すべて空振りに終わりました。有用な情報を集めることが出来ず、申し訳ありません。」

青月せいげつはいたって冷静に、いつもの真顔で言う。

「ん、まあ、あいつらもこっちがどこにいるか分かんない以上、情報を下手に外に出せないんだろ。だからってこっちがカマかけて出るわけにもいかねぇしな。

もともとそんなポンポン情報が出てくるとも思ってねぇ。これから地道に集めればいいさ。」

伝手つてがそれなりにある俺や黒月こげつですら、ほとんど空振りの情報しか手に入れてねぇんだ。しょうがねぇ。

『コウ、これ、何の会議?何で情報集めてんの?あいつらって誰?』

モモは何が何だか分からず、矢継ぎ早に質問してくる。

『別に、お前にはかんけーねーよ。』

このことは、モモには伝えたくない。

復讐ふくしゅうとらわれる恋人なんて、俺は見たくないからな。

『なにそのそっけない感じ。絶対なんか隠してるでしょ。』

こういうときだけ勘鋭かんするどいんだよな…。やめてくれ。マジで。

『隠してるには隠してる。』

『やっぱ隠してんじゃん。』

モモは不貞腐ふてくされる。そんな顔も可愛いと思ってんのは内緒な。

『でも、お前に言えるようなことじゃない。そもそも関係ないことは言わない約束だっただろ。』

『それは…そうだけど。』

モモは押し黙った。

俺達には、昔からいくつかのルールがある。

そのうちの一つが、『お互いに関係のない情報や事象は心配をかけないため言わないこと』だ。

普通はなんでも言え、とか言うんだろうが、そんなにあれこれ言われても、自分たちにはどうしようもないことだってあるし、そもそも生きるので手いっぱいだ。

だから、そういうルールを作った。

「じゃあ、次私報告していい~?」

モモと色々言い合ってたら、いつの間にか黄月おうげつが報告を始めようとしていた。

「ん、いいぞ。」

「じゃ、報告しま~す!」

黄月おうげつは持ち前の元気さで報告開始の合図をした。

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