第5話

青月せいげつ黒月こげつ本当ほんとにどこ行った?

黒月こげつは多分寝てんだろうが、青月せいげつはマジでどこ行った?

「なぁ、白月しげつ青月せいげつどこに行ったか知らないか?さっきお前呼びに行った後から見てないんだが。」

「そういえば、いないね。多分、部屋じゃないかな?ちょっとやり過ぎたって、思ったのかもね。落ち着こうと思ってるんじゃないかな?青月せいげつ段々だんだん大人になってるからね。僕らの知らないうちに。」

「そうか…。」

あいつも、俺がこの家に来たときはまだ六歳だったからな。

俺がしちで、白月しげつきゅう黄月おうげつはち黒月こげつじゅう

みんな子供だった。でも、経験は大人顔負おとなかおまけ。全員心に傷を持った、いびつな家族。

本当ほんと。意味わかんねぇ関係だよな。俺らは。

紅月こうげつ。大丈夫だよ。私たちはちゃんと家族だよ。」

黄月おうげつめずらしく真面目な、でも、笑顔で言った。

こいつは、やっぱりちゃんと姉なんだな。

『コウ。大丈夫?コウらしくないよ。』

モモが心配そうにのぞき込んでくる。

『ああ。大丈夫だ。』

黄月おうげつも、ありがとな。」

俺よりも頭二つ分ほど小さい黄月おうげつの頭をでた。

「はっ!!!紅月こうげつがデレた!!!超激レア!!!ヤバい!!!はあぅっ!!!」

黄月おうげつがテンション上がり過ぎておかしくなった。

思わず後ずさりした。

「今笑ってたね。紅月こうげつ。」

白月しげつにそう言われて、自分が笑ってたことに気づいた。

「まじか…。こいつに笑顔引き出されるとは思わなかったな。」

「だろうね。でも、黄月おうげつ紅月こうげつ普段通りリズムのベースになってるのは、間違いないと思うよ?」

白月しげつは相変わらずの笑顔でそう言った。

「そうかぁ?」

「そうだよ。」

「まぁ、あながち、間違いじゃないかぁ…。」

そんな問答もんどうをしている間に、黄月おうげつがテンションハイMAXマックスから帰ってきた。

「まぁ、そうだよねぇ~♪私、感謝されたもんねぇ~♪私、おねぇちゃんだもんねぇ~♪」

と、にっこにこの笑顔で会話に入ってきた。

「まだテンションハイMAXマックスだったな。とりあえず、お前は一回青月せいげつの部屋行ってこい。」

「へ?なんで?」

黄月おうげつは少し首をかしげた。まるっきり忘れてやがる。

「さっき喧嘩けんかしただろうが。」

「はっ!!そうだった!!忘れてた…。」

頭お花畑だな。おい。

「ちょっと行ってくる!!!!」

部屋はすぐそこだというのに、まるで戦場に向かうかのような顔をして走って行った。いちいち大げさだ。

「走ると危ないよ~。」

ドタバタという黄月おうげつの足音と共に、白月しげつ間延まのびした声が、星奴知家せやちけのホールに響いた。

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