第9話

うあー。

衝撃の事実。


真実は常にひとつ。


いやー、あうー。

ロレさん、女子だと思ってたーーーーーー。うがー。


もやもや感が止まらない。

そうなのか……。そうだったのか……。


あ、そろそろ九時だ。

集会やらなきゃ。


もやもや感を払拭できないまま、ログイン。


うん。ロレさん、まだログインしてないね。

さっき別れたばかりだもんね。うん。


あー、うー。

うだー。


いけないいけない。


前を向こう。



今日も先週同様のスプリングトリガー。

衣装縛りなし。


あー、だいぶ手抜きだ。

でも、まあ、このギリギリで何ができるわけでもなく。



今の私に、突発アイデアとか、無理!



まあいいや。

トリガーあるうちは、これでも。


三々五々、チムメンたちが集まってくる。

あ、佐々木さ……じゃなくて、ロレさんがログイン。


本当に、あの佐々木さんなんだろうか……。

う。

何か怖い。


集まってきたチムメンは、好き勝手にあれこれ始める。

ラッピー軍団はこたつに集まってきているし、ゆみみさんは、前回スクラッチのロビアクダンス66で踊っているので、とりあえずそれに付き合う。

すると、ロレさんやルナが集まってくる。



さて、チーム分け。


「まずはパーティーリーダー決めます」

全部で四チームかな。



「ルーナさん」

「ほのかさん」


ロ……、レさんでいいか。


「ロレさん」

うん。だってしっかりしてるもん。

頼りになるもん。


べ、別に私情とかあるわけじゃなくさ……。


「あと、パグさん」



「で、パーティー分け。みんな、自分のパーティー覚えておいてね」

そして一拍おいて。

「ルーナさんパーティー♪、ねっぴさん、ゆみみさん、ルナさんで」

「はい」

「りょ」

「おっけー」


「ほのかさんパーティー♪、桜火さん、レアニスさん、ホイホイさんで」

「はーい」

「はい」

「了解」


「ロレさんパーティー♪、トウガさん、サニーさん、りっぴさんで」

「そしてパグさんパーティー♪、セリアさんとルーチェさんで」

「はーい」

「はいはい」

「了解でございます」

「ほい」

「はい」



では、行こうか!


全員で、NGSへ移動。

パーティーごとにトリガーポータルを起動して、適宜開始。

ルーナのところのパーティー早いな。もう始めている。


では、うちもがんばろう。


二周ぐらいトリガーを回して、チームルームへと戻る。


そして、三々五々解散。


ロレさんがりっぴと話をしてる。

サニーさんが声をかける。


「あ」


いかん、キーボード叩いてしまった。


「い」とほのかさん。

ナイス!

「う」

続けてくれ。

そして期待通りに。

「え」

最後に。

「おっぱい!」


「コラー」

レアニスさんのコラーまでまとめて、芸の一つみたいなもの。



え、でもちょっと待って。


これをやってるのが、私だって、ロレさんじゃなく、佐々木さんが知ったらどうなる?


私の脳内佐々木さんがこっちを見ている。

「小笠原さんって変態だったんですねねねねねねねねね」

語尾がハウリングして私の周囲を包み込む。


うあああああ。


ダメじゃん。

バレたら最悪じゃん。



いや、最悪って、結局佐々木さんのこと好きなの? 私?

いやいやいやいや。


どうなんだろ。


あー、わかんない。


今日は落ちよう。


「よし。落ちよう」

宣言。

「おつかれさま」


「おつかれー」

「おつん」

「おやすー」


ブラックアウトした画面に映っているのは私だ。

私はあの人のこと、好きなんだろうか。


ロレさん。


FFから移住してきて。

オンラインゲームの作法というか、礼儀みたいなものをよく知っていて。

だから、何としてもチームに入ってほしかった。

オンラインゲームって、みんなが思うほど、バラ色の環境などではなかった。

どちらかというと、あまりよくない。


暴言、セクハラ、いじめ、ストーカーとなんでもありだ。


そもそも私だって。


いや、よそう。そんなことじゃない。

ロレさんのことだ。


PSO2は、基本無料プレイが可能だ。

もちろんプレミアムという月額課金もあるけど。いきなり課金する人はなかなかいない。

だから、オンラインの作法なんか、知ったこっちゃないという人はとても多い。

そこに、長いことFFをプレイしてきた彼(当時は彼女だと思っていたけどさ)がチームにいるというのは、とてもありがたかった。

と、いうか見本になってほしかった。

だから、チームにいてほしかった。

そして、よくサポートしてくれた。


私の言うこと、提案することは、いつもすんなり聞いてくれた。

もちろん、おかしな方向に行ってしまったときは、ちゃんと止めてくれた。


何だ。


昨日今日の付き合いじゃなくて、私とロレさんは、ずっと長いこと、一緒にやってきて。

とても、信頼できる人だと知っていて。


だから、私は彼を好きになってもいいのだろう。

いや、きっと好きになっている。


そうだ。


私は彼のことが好きだったのだ。


いやいやいや。ちょっと待って。


長いこと……。


例えば、こーりんとふんどしダンスを踊っていたこと。

りっぴやるなのスカートの中を覗いていたこと。

ルナにロリコンだなんだと言っていたこと。


私がやっていた変態行為のほとんどを知っているということじゃないか。



そんな女だと知って、彼は私のことを好きと言ってくれるのだろうか。



いやいやいや。


マズい。これはとてもマズい。


小笠原芙美子イコールパグパグとばれたら。


もう、一緒にごはん行ってくれなくなるのでは???

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