秘密①
ホームルームが終わりやっと1日が終わる。
早く家に帰りたい。
急いで準備をして、帰宅しようと思ったところでクラスの子に話かけられる。
内容はこれから一緒に遊びに行かないかとのこと。
私は咄嗟に、まだやらないといけないことがあるからと簡潔に伝える。
ほんとはなにもないけど。
嘘ついてごめんなさいと心の中で謝りその場を後にする。
背後からは、今日も王子様はクールで素敵だったとか、残念だけど毎日お顔を見れるだけ幸せとか、いろいろ言っていたのが聞こえた。
聞こえる度に私の顔が赤くなっていく。
さすがにこのまま帰宅するわけにもいかず、屋上の物陰へと避難する。
放課後の屋上は滅多に人が来なく、よく気持ちを落ち着けるために来ていた。
「はぁ…。だめだなぁ私。せっかく遊びに誘ってくれたのに…。」
クラスの子達は度々遊びに誘ってくれる。
誘ってくれるのは嬉しい。
本当は遊びにだっていってみたい。
だけど、きっと恥ずかしがってまともに会話できないだろう。
それに、もし途中で王子モードになってしまったら、また恥ずかしいセリフや行動をしてしまう。
そのことを考えただけでも顔が赤くなってくる。
未だに王子と呼ばれるだけでも顔が赤くなってしまうのに。
そもそも私が高校生になって、初めて王子と呼ばれるようになったきっかけってなんだったんだっけ…。
あれはたしか…。
…。
…。
現在通っている高校の受験日。
入試の筆記テストを無事受け終えたにもかかわらず、私はすごく緊張していた。
それもそのはず。
この後は面接を受ける。
私にとってテストよりも遥かに難しい問題なのだから。
(うぅぅ。どうしよ…。上手く話せるかなぁ…。ちゃんと声出せるかなぁ…。やだなぁ…。うぅ…。)
そんなことを考えていると、ハァハァとすごく苦しそうな息遣いが聞こえてくる。
そちらをチラッと確認すると私の隣に座り順番待ちしている子の様だ。
(この子すごく苦しそう…。声かけた方がいいのかな…。でも…。)
そんなことを考えていた時だった。
突然、その子が椅子から倒れ落ちてしまう。
私はすぐに駆け寄り、声をかける。
だけど、返事がなく気を失っている様だった。
周りの子も異変に気づき心配そうにしている。
先生たちは入試だった為に到着が遅れ、いつのまにかどんどん人が集まりその子と私は注目を浴びていた。
そして、注目されていることによって私の恥ずかしさは限界を迎え…。
王子モードとなった私は先生の到着が遅い為、その子をお姫様抱っこして保健室へと運んだ。
そして、先生が保健室に到着すると後を任せて面接を受けるために待機していた教室へと戻った。
私は気持ちを落ち着ける前に王子モードのまま面接を受けることになる。
少しずるいと思ったけど王子モードのおかげで面接は難なくクリアする。
ここで終わればまだ少しはマシだったのかもしれない。
問題はここから。
私は先生に倒れた子はどうなるか質問する。
先生の回答は今回は残念だけどダメになるとのこと。
それではかわいそうだと思い、私は必死に説得する。
その姿を見ていた校長先生が感動したとのことで、なんと後日面接を受けることができるようになったのだ。
この一部始終を見ていた子達によって、お姫様抱っこしている姿がまるで王子様みたいだった。
先生に必死に説得している姿が素敵だったなどと人から人へと話が広がり。
こうして私はみんなから王子と呼ばれるようになったのだった。
…。
…。
なんだか思い出しただけで恥ずかしくなってきた。
あの子を助けられたのはよかったけど…。
せっかく気持ちを落ち着けるために屋上に来たのにこれじゃあ意味がない。
これ以上は考えないようにしよ…。
そろそろ帰ろうと思い、物陰から出ようとした時だった。
ドアを開く音が聞こえる。
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