私を王子と呼ばないで

たるたるたーる

第1話 プロローグ

ピピピピピ


いつもの起床時間にセットしたアラームが鳴り響く。


アラームを止め、リビングへ。


登校の準備を済ませるとお母さんにどこかおかしいところはないか確認をしてもらう。


今日も夢子はかわいいわよと言われ顔を真っ赤にしながら家を後にする。


私は極度の恥ずかしがり屋でお母さんに褒められるのさえ顔が赤くなってしまう程である。


この性格のせいで周りから注目されるのが苦手。


人と話すのでさえ多人数だと恥ずかしさからまともに話すことさえできない。


少人数なら多少マシなんだけど。


そんな私には悩みがある。


恥ずかしがり屋なところもそうなんだけど、それ以上に…。


そんなことを考えながら歩いていると、背後から声をかけられる。


「ごきげんよう。王子さん。」


振り返るとそこには一人の美少女と、その背後に彼女の付き添いの子達がいた。


彼女は同じクラスの子で名前は倉音姫華〈くらね ひめか〉さん。


上品で自信家で、なによりもみんなが憧れ、思わず見惚れてしまうほどの美少女である。


その容姿から周りからは姫様と呼ばれている。


緊張しながらも私が挨拶を返そうとすると付き添いの子達が今日も王子様素敵!とか、やっぱり姫様と並ぶと画になるわ!などと言っているのが聞こえる。


そして、周りの人達も集まりさらに注目される。


恥ずかしさのあまり思わず顔を伏せてしまう。


あぁ。もうだめ…。


そして、限界に達する。


…。


僕は顔を上げ、姫へと近づく。


「やぁおはよう。今日の姫も美しいね。」


僕はニコッと微笑みながら挨拶を返すと、軽く彼女の手の甲にキスをする。


「ふふ。そうでしょう。あなたも変わらず素敵ね。」


姫も嬉しそうにニコッと微笑む。


周りからは黄色い歓声が上がっていた。


二人でお互いを褒め合うと、僕は周りの子達にも挨拶を済ませ微笑むと、姫達と別れる。


そして、途中人気がないところに移動すると、冷静になりその場に頭を抱えながらしゃがみ込む。


ああああぁぁぁ…。


またやってしまった…。


私は恥ずかしさの限界を迎えると、普段なら絶対に出来ない恥ずかしい行動や言動。


つまりいつもの真逆の性格になる、王子モードになってしまうのだ。


これが私が周りから王子と呼ばれる原因であり、昔からの一番の悩みでもあり、誰にも相談することが出来ないでいる。


まぁ、そもそも相談相手どころか友達すらいないんだけど…。


私はため息を吐きながら立ち上がると再び学校へと歩き出す。


教室に着くとクラスの子が挨拶をしてくれる。


私は彼女に対して片手を軽く上げると、自分の席へ。


恥ずかしがり屋の私が出来る最大限の挨拶がこれなのだ。


普通なら無愛想とか暗いとか言われるはずなのに、周りの反応は違う。


キャー!王子様に挨拶しちゃった!とか。


今日もクールで素敵!だとか。


王子モードの時のこともあり、周りが勝手に勘違いをしていく。


訂正しようにも私にそんなことができるはずもなく…。


これが私の学校での日常なのである。

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