第30話 吉野さんとデート1
バチバチと火花を散らす二人を何とか落ち着かせて、本日の目的地である水族館へ向かうことにした。
もちろん移動は友梨さんの運転する車だ。別に電車に乗ればいいと言ったのだが、二人に自殺行為かと窘められた。
ならば男性専用車両はどうかと提案したら、水族館に着くまでの間離れるのは嫌だと駄々をこねられたのだ。
結局俺が折れて、今は車で向かっているというわけだ。
「なんで、私とのデートなのに隣が…」
「文句を言わないでください。悠様に助手席へ乗っていただこうとしたのに止めたのは吉野さんじゃないですか。」
「そっちだって後ろに一緒に座ろうとしたら止めてきたでしょう!?」
「そんなの、あなたのような乳のでかい女が後ろで悠様に誘惑しないとは限らないでしょう!!当然止めるに決まっています!!」
結局車の中でも言い争う二人を鎮めていると、あっという間に水族館へ着いてしまった。
(はぁ、デート特有の着いたらどこに行こうみたいなのができなかったなぁ…。)
「はぁ……。」
「ゆ、悠様!?どうかされましたか?もしや車酔いされてしまったのでは……?」
「えぇ!?だ、大丈夫なんですか!?」
「あぁ、いやなんでもないですよ!ちょっと水族館に着く前に疲れただけというか…」
主に二人のせいでだけど…。
「せっかく水族館に来たんだし、早くいきましょうよ!あ、でも先にチケット買わなきゃですよね。」
俺は気を取り直して水族館に入ろうとしたが、チケットを買う必要があったなと売り場へと行こうとする。
「ちょ、ちょっと悠様!!そんなところに並びに行かないでください!そこは一般客用ですよ!」
「え?俺達も一般客じゃないですか。」
友梨さんは何を言っているのだろうか。
「悠様は男性なのですから、男性専用入口から入ってください!!先にお伝えしていなかった私が悪いのですが、やはり危機感が無さすぎますよ……」
「…真壁さん、もしかして御門さんはいつもこうで……?」
「えぇ…。女性に対して寛容なことは大変喜ばしいのですが、いささか危機感というものが足りなくて……」
えぇ…。2人してそんな目で俺を見ないでくれよ…。
「あぁ、そうだ真壁さん。今回は私が誘ったのでチケットは既に購入してますよ。せっかくなんでこれを使ってください。いや〜どうも浮かれていたようで2枚用意してしまって。男性は顔パスだと言うのをすっかり忘れちゃってましたよ〜あはは〜。」
「では遠慮なく頂戴します。代金は後ほど。」
そんなふたりのやり取りを眺めて男性専用入口から入ることにした。
係員のスタッフがボソッと「あの万願寺グループの…ときの…」と呟いていたが俺は気づいてないふりをしてそそくさと中に入る。
中に入ると、俺の知っている水族館とほとんど同じだった。さすがに、娯楽施設だからそりゃそうだよな、と思ったが水槽の前には『男性優遇鑑賞エリア』とかかれた円があり、近くによると水槽を眺めていた女性客たちがスッと離れていった。
「ひゃっ!だ、男性の方!?す、すみません!!すぐにどきます!!」
「え…。」
そう言って離れて行ってしまうお客さんに対して申し訳ないという気持ちと、何か引っかかるような感じがして考え込んでしまう。
(最近思うんだ。俺のことを見ている女性は少なくとも好意的な視線が多いと自分でも思う。でも近くにいるときは、先ほどのようにすぐに離れて避けられてしまう…。この世界の常識でいうと男が少ないということは、世の女性は出会いもなく、日々男性に飢えているらしい。そのため、男性が目の前にいると理性を保つことが難しくて、街中で一人でいる男を見かけると連れていったあと襲ってしまうらしい。そういう事件も調べたら今までで多く起こっているのをみた。なのに、なのにだ!俺はまったく襲われない!友梨さんがいるから?姉さんがいたから?美織や六花に助けられたから?どれも違う気がする。もしかして俺は……)
深く考え込んでしまい、ある結論へと辿り着きそうになったときに、友梨さんと吉野さんに声をかけられた。
「悠様!すみません、一人にしてしまい…先ほどの女性たちからなにもされませんでしたか?」
「だ、大丈夫です。なんか近くに行ったらすぐにどこかへいってしまって…」
「そうでしたか…よかった…。」
「御門さん!あっちのクラゲのコーナーを見に行きませんか!ふわふわゆらゆらとかわいいですよ〜」
笑顔で俺を呼ぶ吉野さんをみて、俺はさっきの考えに自信が持てなくなり、一旦はデートを楽しむことにした。
☆あとがき☆
昨日は投稿できずすみません!
ちょっと詰まってきたので、18:00更新しばらく無理かもです!申し訳ない!
悠が、自分がモテないだけなのではないかということに気づきかけています…。あぁ吉野さん!友梨さん!助けて!!!
男が極端に少ない世界で俺だけモテない?否、むしろモテすぎていた!? お狐丸 @yu_331
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