第28話 万願寺崩壊

「はい?あなたとこうして話すのは初めてのはずですが、そうですね一言でいうなら無関係でしょうか。……それよりも今悠さんのことをなんとおっしゃいましたか?私には『不細工』と聞こえたのですが聞き間違いですよねぇ??ねぇ!?」


「は、はぇ?」


なんとも情けない顔で返事をする万願寺に美織は畳み掛ける。


「悠さんほど整ったお顔をされた上に性格も素晴らしい男性なんていないはずなんですが、私の利き間違えですよね!貴方のように太っていて汗をかいた汚い方が悠さんよりも優れているわけがないんですから!ふふふ!!」


「な、なにをいってるんだ美織……。お、俺様は万願寺グループの御曹司だぞ!!俺様が一番なんだ!!そ、そうだ!俺様に逆らったらお前のところの夕立家を潰すこともできるんだぞ!!いいのか、そんな口きいて!」


まずい、俺のせいで美織が暴走してしまった…。このままじゃ美織の家族にも迷惑をかけてしまうことになるんじゃないのか…。


俺は先ほどまでの、自分の軽率な行動に後悔してしまった。


そんな俺を見て、さきほど万願寺に向けていたものとは違った笑顔で美織が手をぎゅっと握ってくれた。


「大丈夫ですよ、悠さん。あなたはなにも心配する必要はありませんから。」


美織はそういうとスマホを取り出して電話をし始めた。


「もしもし、お母様。はい、美織です。今朝お願いしていた件なのですがなにか……。まぁ、そうでしたか!はい。ありがとうございますお母様。え、えぇ!?そ、それはまた帰ってからで!はい。では失礼します。」


どうやらお母さんと電話をしていたらしく、スマホを制服のポケットにしまうと、万願寺へと向き直った。


「万願寺様は私の家へ婚約を申し出ていたそうですが、先ほど正式にお断りさせていただきました。」


「なっ!!!??なんでだよ!!!!俺様からの婚約だぞ!?なんで断ったんだよ!!」


うーんと言いながら美織が説明しだした。


「理由は2つあります。そうですね、まず一つずつ説明してあげましょう。1つ目はあなたの万願寺グループは潰れたようですよ。あなたのお母様の汚職が原因でね。どうやらいろいろと危ないところと繋がっていたそうですよ。」


「お、汚職……?」


万願寺は信じられないといった表情でその場にへたりこむ。


「その結果万願寺グループは解散して、傘下の企業は次々と夕立家の下につくことになったそうです。これであなたの言った会社の後ろ盾はもう使えなくなりました。そして2つめは先程のあなたの発言です。」


そういうと、美織は近くにあった机をバン!!っと叩いて万願寺を睨みつけた。


「あなたは先程悠さんのことを『不細工』と言いました。私の敬愛するお方のことを不細工だと罵ったんです!!!それがどれだけ許されないことか……!!!」


美織の気迫に気圧された万願寺は、プルプルと震えだして後ろへと下がっていく。

今にも殴り掛かりそうな美織を止めに入ろうとすると、部屋の入口にいた理事長先生が手を強く叩いた。


「そこまでだ、夕立くん。これ以上は君の立場が悪くなるよ。一旦落ち着きたまへ。」


そう言って美織の肩をに手を置き後ろに下がるよう促す。


そして理事長先生は万願寺の前でしゃがみ込んで話し始めた。


「さぁて、万願寺少年。君に選択肢を与えよう。ひとつは、御門くんに謝罪して今後一切夕立くんたちへ接触しないと誓い、問題行動を起こした場合はすぐに退学すると約束すること。もうひとつは、退学して、このままこの部屋で行われた君の発言をTV局に渡して全国放映してもらい、貴重な男性としての立場も尊厳もなくした状態で生き続けるのか。さぁ好きな方を選んでくれ。賢い君ならどっちを選べばいいのかわかるだろう?」


え!?今録音って聞こえたけど、それさっきの俺の発言もはいるってことじゃん!やめて、めちゃくちゃ恥ずかしいこと言ってた気がする!!頼む万願寺、お前にとっても2つ目の選択をとる必要がないだろ!?


俺の心の中の願いも空しく万願寺は抵抗し始めた。


「いくら理事長だからって俺様に指図するんじゃねぇ!!!!!誰があんな不細工に謝るかよ!!美織は、俺様のものだああああ!!!!」


あぁ、どこまでも馬鹿なやつなのかお前は…。


いつの間にか俺たちの前まで来ていた友梨さんが、錯乱しながら美織に襲い掛かろうとしている万願寺の襟元を掴んで投げ飛ばした。


「ご苦労、友梨くん。ここまで歪んでいる思想をもった少年も初めてだな。さて、御門くん。未然に防げなくてすまなかったね。この件に関してはあとは我々大人に任せてくれ。昼休みもとっくに過ぎてしまっているが、担任には伝えてあるから最悪5限はでなくてもいいさ。」


「それならお言葉に甘えさせてもらいます…。あの、さっきの全国放映とかって冗談ですよね?」


「いや?冗談なんかじゃないよ?彼の処遇に関しての証拠と、君に対する取材の時の映像などに使うつもりだ。」


あぁ…。終わった。

未だ投げ飛ばされて意識を失っている万願寺のせいで俺の痴態が全国放映されることになってしまった。


ただここにいても、もうどうすることもできないため、5限が終わるまで美織とお互いに気まずい時間を過ごしたあと、教室へと戻るのだった。





☆あとがき☆

万願寺家のその後についてまた執筆予定です。

ざまぁし足りない人はそちらもお楽しみに。

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