第27話 悠、キレた!

今朝、俺のことを睨んでいた男子が昼休みになった途端教室にいきなりやってきたと思ったら、そのままこの空き教室まで連れてこられたわけなんだけども…。


今俺の目の前には、やけに汗をかいた額にふぅふぅと激しい鼻息を鳴らしている小太りの男子生徒が立っている。


そして、俺はこの教室に来てからずっとキレられ続けているわけだが、なにか理由があるのだろうか。

いや、間違いなく美織関連ではあるのだが、こいつに美織とのことで何か言われる理由が見つからないというか…。


「おい!聞いてんのか!!!俺様のことを無視するんじゃねぇよ!!!」


「あぁ、悪い。なんで君が怒ってるのかわからなくてさ。」


「そんなこともわからないのか!不細工のくせに頭も悪いんだな!!いいか、もう一度言うぞ、俺様の美織と二度と喋るんじゃねぇ!!!」


うーん。何度聞いても理解ができない。こいつに何の権限があって美織と話せなくなるんだ?

俺はつい引っかかってしまったことにツッコんでしまう。


「いや、そもそも君は誰なんだ?それに、君に美織とのことでここまでキレられなきゃいけない理由があるとでも言うのか?」


「俺様を知らないだと!?そうだったな、貴様は編入生だったか。チッ。いいだろう名乗ってやる。俺様は万願寺太まんがんじふとし様だ!!あの万願寺グループの御曹司様だぞ!!!」


まんがんじ…?なんだ、それ。そんなご存知の通りって言われても知らんぞ。


「そして美織は俺様のなんだ!!!だからお前は俺様の美織に近づくなってことだ!!!わかったか!!」


はっはーん、そういうことでしたか。婚約者ねぇ。自分の婚約者が他の男と仲良く喋ってたらそりゃ嫌だよな。

ん?いやでも今婚約者っていったよな??

つまりは勝手に候補に入れてるだけで、別に何の関りもないってことじゃないのか?

それなのに他の男にキレるとかどういう神経してるんだ、こいつ。


「いや、候補なら別に婚約者として決まったわけじゃないんだよね?それに美織からは婚約者がいるとは聞いてないけど、それって君が勝手に思ってるだけなんじゃないのか?」


だが、彼にもなにか理由があるのだろうとひとまずは優しく諭すように聞いてみた。多少イラついてはいたが、俺はこれでも中身は24歳なのだからすぐにキレたりはしない。

はずだった。


「そ、そんなの俺様が決めたことだから絶対にこれからそうなるんだよ!!だいたい、俺様のような男が求めてやってるんだから女が受け入れるのは当然だろ!!いいか、あいつは、美織は俺様のなんだよ!」


ブチッ


「おいこらクソガキ。今なんて言った?」


俺は低い声でそう言い、万願寺を睨みつける。


「だから美織は俺様のものだって……ひぃぃいいい」


「今、美織のことをものって言ったよな!?てめぇ、ふざけんじゃねぇぞ!!!」


あまりにも度の過ぎた発言に我を忘れてブチ切れた俺は万願寺の胸ぐらを掴んで叫ぶ。


「この世界の男が貴重なのは確かだけどな、だからって女性に何を言っても、何をしてもいいってことにはならないだろうが!!それに、俺の大事な人のことをもの扱いするんじゃねぇ!!!!」


思ったよりも大きな声を出してしまったが、まだ怒りは収まらない。


「お、お前、俺様にこんなことをしてタダで済むと思ってんのか!!」


ビビりながらプルプルと震えて抵抗してくる万願寺に対し、俺は未だ収まらない怒りをぶつける。


「うるせぇ!!!お前がどんな奴だったとしても、女の人をもの扱いしたことを俺は絶対に許さない!!同じ男なのになんで女性をもの扱いするんだよ!!意味わかんねぇこと言ってんじゃねぇぞ!!!」


「お、お前こそ何言ってやがんだよ!女は俺様のような男がいないとなにもできないんだから、俺様に尽くせるなら本望だろうが!!」


「てめぇ……!!!!」


ついに我慢できずに万願寺の顔面を殴ろうとしたその時、俺たちのいる部屋の扉が開かれて美織たちが入ってきた。

その中には友梨さんと理事長先生の姿もあった。


「悠様!!この状況は一体……?それに、万願寺のご子息まで…。」


「悠さんがなかなか戻ってこられなかったので、心配になってきてみたのですが…。そちらの方はいったい…?」


腰を抜かして倒れている万願寺の胸ぐらを掴み凄んでいる俺という構図に、皆は困惑した様子だったが美織がきたことで万願寺が勝ち誇った顔になり俺の手を振り払った。


「ふんっ!さっさと放せ、くそが!!……おぉ、よく来てくれたなぁ美織ぃ。」


「え、えぇと…?」


「どうしたぁ???そうだ、聞いてくれよぉ。今俺様はこいつに、酷いことをされちまったんだよ。さぁ早くこの不細工の編入生に本当のことを言ってやってくれよ!!!俺様との関係をよぉ!!」


万願寺の言葉を聞いた瞬間皆の眉間にぴきりとしわが寄り、全員が万願寺を睨みつける。

そして、万願寺に呼ばれた美織がゆらりと一歩前に出てきて、万願寺に対してハッキリとを口にする。


「はい?あなたとこうして話すのは初めてのはずですが、そうですね一言でいうなら無関係でしょうか。……それよりも今悠さんのことをなんとおっしゃいましたか?私には『不細工』と聞こえたのですが聞き間違いですよねぇ??ねぇ!?」


「は、はぇ?」


なんとも情けない顔で返事をする万願寺に対し、ニコニコと笑いながらこぶしを握り締める美織というなんとも変な状況になってしまった。






☆あとがき☆

思ってるよりも作者は小太り君をいじめたかったようなので次の話までまたぐことになってしまいました。

もう少しお付き合いください。


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