2章

第22話 なんでここに?

今日から俺にとって6年ぶりとなる高校生活が始まろうとしていた。


俺はいつもより少し早めに起きて、まだ新しい制服に袖を通し変なところがないか確認する。

この世界の俺の顔にも随分と慣れてきた。ちくしょう、やっぱりイケメンだな。


そんな自分の顔に悪態をつきつつ鞄を持って部屋を出ると、俺の家に本来いないはずの女性がそこには立っていた。


「おはようございます、悠様。天川高校の制服姿も大変よくお似合いですね。とても素敵です。」


そう言って俺を出迎えてくれたのは、なんと編入試験のときに案内してくれた真壁さんだった。


「おはようございます??え?なんで真壁さんが…?」


「おや?お聞きになられていないのでしょうか…。では、それについては下に降りてからお話いたしましょう。鞄をお持ちいたしますね。ささ、お母さまが朝ご飯を用意してくださっていますよ。」


「え、あはい。お、お願いします…」


俺は何が何だかわからなかったが、とりあえず真壁さんに続いてリビングに向かうことにした。


「あら~悠ちゃんおはよ~。友梨ちゃんもわざわざありがとうね~」


「いえいえ、これも私の仕事ですので。」


なにやら仲良くしている二人を見て俺は余計に混乱してしまう。

俺がおかしいのか?母さんは真壁さんのことを下の名前で呼んでいるし…ていうか真壁さんの仕事って秘書じゃないのか?


この状況を受け入れらない俺はひとまずなぜここに真壁さんがいるのか聞くことにした。


「ちょ、ちょっと待って母さん。なんか普通に話してるけど、なんで真壁さんがここにいるの?」


「あら?言ってなかったかしら?合格通知を貰った日に送迎兼護衛を用意するって伝えたと思うんだけど~」


「おはよう、悠。学校に通うことになったら用意すると言ったはずだぞ。そのために友梨さんも今日から来てくれているんだしな。」


あ、姉さんだおはよ。じゃなくて!!


「いや、まぁ。俺も助かるから送迎役の人を用意するってのは聞いてたけどさ…真壁さんって理事長秘書なんじゃないの?」


俺は真壁さんが理事長秘書という立場にあることを知っていたから、なぜ俺の送迎役としてここにいるのかがわからなかった。


「あぁ~そのことね。そういえば悠ちゃんには送迎の方を用意するからとしか言ってなかったわね~」


「あぁ、なるほど。それで先ほども私を見て驚かれていたのですね。では、お母さま。私から悠様にご説明させていただいてもよろしいでしょうか。」


「ええ、じゃぁ友梨ちゃんお願いね~」


俺を椅子に座らせたあと、真壁さんがなぜここにいるのか理由を説明してくれる。


「まずは驚かせてしまったこと申し訳ありません。私がなぜここにいるかといいますと、先にお伝えしておきますが私の役職はつい先日理事長秘書から理事長第2秘書へと変わりました。」


ほ?第2秘書?とは?


「夕寧様から通学の送迎兼護衛の人選について理事長に相談されているのをお聞きしいたしまして、それならば少しは顔見知りの方が悠様もご安心なされるのではと思い、私の姉に秘書の立場を任せ、自分は第2秘書という役割に変わることで、送迎兼護衛役を希望したのです。そして無事、お許しを頂き、本日からこうしてお伺いさせていただいているのです!おわかりいただけましたでしょうか。」


えっへんとない胸を主張しながらどや顔をする真壁さん。


「まぁ理事長にはだいぶ無理を言いましたが、彼女なら私がいなくても大丈夫でしょう。」



つまり、真壁さんは今までの秘書という立場を捨ててまで、俺の送迎役を買って出たと。そして今日から始業式で送迎が必要なため、家に迎えに来ていると。

なるほどなるほど〜???


理解はできた。だがすぐに納得できるかといえばそうでは無い。

ただ一度案内をしただけの少年の送迎役にそこまで価値があるのだろうか。

いや、待てよ。もしかして、真壁さんって俺のこと好きなんじゃないか!?

へ、へへ。こんな美人に好かれるなんてお前もやるなぁ悠!それならそうと言ってほしいよな~!


などと一人で妄想に耽っていると、真壁さんが俺の前で跪き俺の手を取って真剣な表情でこちらを見つめてきた。


「悠様の学校生活がより良いものになるよう、毎日の送迎、護衛役として精一杯務めさせていただきます。必要があればこの命にかけてあなたをお守りすると誓います。何卒よろしくお願い致します。」


「は、はい。お願いします。」


あ。これ違うわ。

好きとかそういうのじゃなくて忠誠とかそういう類のやつだ。

うわぁああああああ!!!!

自惚れて俺に気があるんじゃないかとかそんなこと考えちまったぁああ!!!恥ずかしすぎる…この体のせいで心まで童貞に戻っちまったのかよぉおおお!!!

くそっ。顔が良くても中身が前の俺ならモテるとかそんな訳ないじゃないか…


「ささ、早くご飯食べて出る準備しなくっちゃね!」


俺が恥ずかしさに耐えきれず悶えていると母さんがご飯を食べるよう言ってきたので、もそもそと食べ始めることにした。



うぅ。イケメンになって調子乗ってたけどあんま自惚れない方がよさそうだ…

どうせ俺よりイケメンなんていっぱいいるんだろうしな…


はぁ。学校でも勘違いしないように気をつけよ…




☆あとがき☆

第2章学校編スタートです!

まさかまさかの友梨ちゃん再登場です!

そして悠の中で自分はモテないのでは?という考えが芽生え始めてしまいました。




☆新作小説投稿のお知らせ☆

本日新作のラブコメ小説を投稿しました。

「僕は幼馴染に裏切られた。だから俺は本気を出す」という幼馴染ざまぁ系のラブコメになります。


https://kakuyomu.jp/works/16816927861984466906


こちらは話のストックが切れ次第不定期更新となります。

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