第19話 理事長先生との面談1
「先ほどはお見苦しい姿を見せてしまい申し訳ありませんでした…。次は面談ですが、理事長に確認したところいつ来てもらっても構わないということでしたので、今からご案内させていただきますね…。」
さっきの暴走のダメージが思ったより大きかったのか、真壁さんはどこか元気がなさそうにみえた。
「はい、お願いします。その、さっきの件は気にしてないですから。」
俺は気にしてないと伝えると、真壁さんはありがとうございます。と一礼したあと少し表情が明るくなり、理事長室へと案内してくれる。
案内された部屋のドアの前には「理事長室」と書かれており、真壁さんがノックすると『入りたまへ』と女性にしては少し低めの声が聞こえた。ドアを開けて中へ入った真壁さんに続いて俺も入出する。
「理事長。御門様をお連れ致しました。」
部屋に入ると、奥の椅子にはビシッとしたスーツを着た女性が座っていた。長い黒髪はポニーテルにして結ってあり、如何にもできる社長といった風格を纏っている。どうやらこの女性が理事長のようだ。
「あぁ。ご苦労だったね友梨くん。さてさて、君が御門悠くんかな?ほぉ~なんだ、夕寧くんから聞いてたよりもかなりの男前じゃないか。いや、美少年ってのが一番しっくりくるかもなぁ。」
理事長はニヤニヤしながら俺の顔をじろじろと見たあと。立ち上がり目の前に来て俺に握手を求めてくる。
「自己紹介がまだだったね。あたしはこの学校の理事をしている
座っているときは分からなかったが、近くに来た理事長は俺よりも身長が高かった。俺が170後半だから多分180以上ありそうだ。
「こちらこそ、突然編入したいと無理を言ったのに時間を作っていただきありがとうございます。ですが、まだ入学できるか決まった訳では無いと思うのですが。」
俺は握手に応じつつ、お礼を伝えると座るよう促されたのでソファへと腰掛ける。
すると理事長は足を組みなおして俺の方を見ながら話しだす。
「あぁ〜そのことなんだけどね、御門くんは合格だよ。あぁ、先に行っておくと男だから合格させた訳じゃないからね。そこは安心して欲しい。」
ほ?
「?先程試験を受けたばかりなのに、なぜ合格になるんでしょうか…?姉には試験の結果で落とされても文句は言わないと伝えてほしいとお願しましたが…」
「ああ、それはもちろん聞いているとも。いやね、実は面接をしている間に君の答案は私が採点をしておいたんだ。と言っても、満点だったから採点が楽で非常につまらなかったがね。」
理事長はくっくっくと笑いながら俺に答案を渡してくれた。そこにはすべて100点と書かれており、点数の横には『天晴』と判子が押してあった。
「これで筆記はOK。それに面接の様子も採点しながら別室で見ていたんだよ。受け答えもしっかりしていたし、結果はもちろんOKだ。両方とも合格点をたたき出した君は合格になる、というわけだ。理解してくれたかい?」
「は、はい。そういうことなら…」
「そうかそうか!いや~受けたはいいが、やっぱり辞めとくと言われたらどうしようかと思ってなぁ。うんうん、よかったよかった。では、ひとまず先にこちらの書類を渡しておこう。自宅に着いたら母君に確認してもらうよう伝えておいてくれ。」
「わかりました。…って書類があるってことはさっきの筆記がどうとか面接がとか関係なく、結局は合格させるつもりだったんじゃないですか!!」
「はっはっは~!バレてしまったか!さすが夕寧くんの弟さんだな~うんうん。聡い子は大変好ましいよ。まぁ、細かいことは気にしないでくれたまへよ。結果的に君は試験にも合格したんだし別にいいだろう?どっちみち合格だったんだからこの書類のことなど些細なことさ。」
そういうことならそうなのか?ん?わからんくなってきた…。
なんかずっと理事長の手のひらの上だったと思うと俺は何とも言えない顔になってしまう。
「理事長。本題から逸れていますよ。本日お呼び立てした件についてお伝えするべきです。」
俺がむくれていると、後ろから真壁さんが理事長に本題を伝えるよう催促した。
「あぁ、わかっているとも、は~あぁ友梨くんはお堅いんだよ。毎日毎日息苦しい環境で働いてるんだから、今日くらい美少年との世間話の一つや二つ許してくれてもいいじゃないか。まったく固いのはその胸だけにしといてくれよ…っと悪かったって!ちょっとした冗談じゃないか!な!?だからその書類は降ろそう!?」
理事長からのセクハラに対してニッコリと微笑みながら手に持っている書類を振り上げようとしていた真壁さんに、理事長は必至で謝ったあと俺に助けを求めてくる。
「はぁ…。怖い怖い…御門くんもちょっとくらい世間話したっていいと思うよなぁ?」
俺は、はははと苦笑いすることしかできなかった。
確かに真壁さんはスラっとしてるけど。ないわけじゃないから。どこがとはいわないけど。うん。ないわけじゃないから。
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