第18話 編入試験2
3科目あった筆記に関しては、いずれも半分ほどの時間で終わってしまった。
ただ、数日前の記憶の混同によるおかげか、ほぼ満点取れただろうという自信があった。
なんだかズルをしている気にもなったが、24歳が高校試験受けたらそりゃそこそこできるよなと自分の中で言い訳をしてしまう。
ずっと集中して解いていたからか、思ったよりも疲れてしまっていたようでついあくびが出てしまった。
すると真壁さんがコーヒーを用意してくれたので、ありがたくいただきつつこの後の流れを聞くと、まず校長先生と2年の担当の先生数名との面接を行った後、理事長先生との面談で今日の試験は終了とのことだ。
最後の面談がどれほどかかるかわからないため、母さんが迎えに来るまでの間この教室で休憩するか校舎を案内するかどちらでもいいといわれたので、校舎案内を希望しておいた。
ただ、俺的には理事長先生と面接ではなく面談というところに少し引っかかったのだが、真壁さんからそろそろ移動するということで面談については一旦気にしないことにした。
面接官のいる部屋の前へと移動した俺は慣れた手つきでノックをする。
部屋の中からどうぞ~という声が聞こえたので入出すると、なんとスーツを身に纏った複数人の女性がこちらを見ていたのだ。
就活を経験した俺にとって面接など大したことはないだろうと思っていたのだが、まさか別の意味で緊張することになるとは思わなかった。そういえばそりゃそうだと、この世界の常識にいつまでも慣れない自分を恨んだ。
そのため、面接が始まる前から違う意味で緊張しっぱなしだった俺は優しそうなおばあちゃんの校長先生を見て気持ちを落ち着かせることにした。
ふぅ。他の方には失礼かもしれないが面接中はおばあちゃん先生を主に見ながら受けることにさせてもらおう。
落ち着いた後、そのまま滞りなく面接は進み、あまりに学生らしからぬ俺の雰囲気にまるで社会人と話しているようだといわれたときはかなり焦ったが、その後は用意しておいた回答で難なく終われた。
ただ途中結婚歴と婚姻歴を聞かれ、一人もいないと答えたときの先生たちの視線がめちゃくちゃ怖かった。
おばあちゃん先生が次の話題へと移ってくれなければどうなっていたのか想像したくもない。
あれは獲物を見つけた捕食者の目だった。ひょえ…
♦♢♦
「御門様。面接お疲れ様でした。続けてになりますが、理事長室へと案内いたします。…随分とお疲れのご様子ですが、もしかして面接中になにか不快な思いをされたのでしょうか。もしそうであればこちらの失態です。不快に思った教員の特徴を言ってくださればすぐにでも解雇いたしますのでどうぞご遠慮なく。」
「いやいや、解雇なんてしたらかわいそうですって!ほんとなんでもないです!美人な人に囲まれたので緊張して疲れただけなので……」
そういうと真壁さんはなぜか驚き、顎に手を置きながらなにやらぶつぶつと考え始めた。
「確かに当校の教員は比較的顔の整っていると判断したものを採用しておりますが、男性の方から直接美人だという言葉を聞いたのは初めてですね。御門様は、最初に出会った時から他の男性とは違った何かを感じていたのですが…ふむ…。」
うっ…実は別世界から来た転生者で実年齢は24歳です☆なんて知り合って間もない人に言えるわけないし、困ったな。どうしよう…。
「えーっと…」
俺が反応に困っていると、真壁さんが早口でこちらを見ながら喋りだした。
「今までの私の経験で言うと、ある一人を除いて、普通成人を迎えていない男の方は女性に対して常に怯えているか、自衛のために悪癖をつくといった方たちとしか出会ったことがなかったのです。なので御門様のような男性もいらっしゃるのは今日が初めてで驚いてしまいました。あぁ、でもそれが悪いと言ってるわけではなく、むしろその逆で、私たち女性からすると御門様のような男性がいるということは嬉しいの一言に尽きるのです。もっともっと、御門様のような方が増えるとこの国はさらに豊かになっていくと思うんです!ですが、現在の日本では男性がそこまで多くはないので、御門様のような容姿で褒めるようなことをされてしまうと、免疫のない女性に外で襲われる可能性が高くなってしまいますよね。となると、そうもいいかないですか。はぁ……。っ!失礼いたしました!気になることがあるとつい考え込んでしまう癖がありまして、大変申し訳ありません!」
「いや、大丈夫です…。」
こちらとしては、真壁さんが暴走してくれたおかげで変にツッコまれなかったのでホッとしてます…
真壁さんに何度も謝られたが、正直ほとんどなに言ってるかわからなかったので大丈夫ですよと流しておいた。
俺の中で真壁友梨という女性は、できる秘書からおもしろい女性へと評価が変わった瞬間だった。
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