第17話 編入試験1

「ちゃん……悠ちゃん!」


「え。な、なに。」


「も~学校着いたよ~?」


どうやら俺が父さんに関することを考え込んでいる間に、学校に着いてしまったようだ。


「ん?さっきのでかい建物と比べたらここ暗い感じがするけど、ほんとにここであってるの?」


「うんっ、ここは男性送迎用の地下駐車場になってま~す。そ・れ・よ・り!お母さんを無視するとはひどい息子だなぁ~。」


母さんはうりうり~と俺のほっぺをつんつんしてくる。


「ごめんって、母さん。ちょっと考え事をしてたから…」


元はといえば母さんのせいなんだけど。


「えへへ。悠ちゃんのほっぺもっちもち~♪まぁ、試験で緊張するのはわかるけど、夕寧ちゃんもほぼ顔パスみたいなものだって言ってたんだから大丈夫よ~。それに悠ちゃんだもの!絶対合格するわ!」


そういうことじゃないんだけど…まぁいっか。今は試験を受けることに集中しないとだな。


俺は母さんのつんつん攻撃から逃れて、車を降りることにした。


「それじゃぁ行ってくるよ。試験って結構時間かかると思うから、母さんはその間ゆっくり買い物とかして羽を伸ばしてきてよ。終わったら連絡するからさ。」


母さんはしばらく考えてから了承してくれた。


「う~ん、せっかくだしそうさせてもらおうかな~。でももしも何かあったらすぐ連絡してね?それか、天川高校内の男性保護局に向かうのよ~。それじゃぁ悠ちゃん試験頑張ってきてね~いってらっしゃいっ」


全く、母さんは心配性だな。

俺は母さんに手を振り、校内の入口へと向かった。


てか、男性保護局か。学校内にもあるんだなぁ。もしかしなくても男性が関わることがある場所には必ず設置されてるのか?それだったらとんでもない数になりそうだけど。


などと考えながら、入口へ近づくとエレベーターの前に一人の女性が立っていて、俺が近くまで来ると深く頭を下げてから丁寧に挨拶をしてくれる。


「お待ちしておりました。理事長より御門様の案内役を仰せつかりました。秘書の真壁 友梨まかべゆりと申します。本日は御門様が安心して試験に臨めるように誠心誠意対応させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。」


真壁と名乗った女性はこれまたとんでもない美人だった。髪は肩に少しかかるくらいの長さで片方だけ耳にかけており、スラっとした体型のためスーツがよく似合っていてまさしく秘書といった感じの女性だった。


「これはご丁寧にどうも。私株しk…ゴホ!いえ、なんでもありません。ええと、試験を受けに来ました、御門悠です。今日はよろしくお願いします!!」


真壁さんの口調につられてつい、社会人のころの癖が出てしまいそうになる。焦っていると、真壁さんにふふっと笑われてしまい、試験が始まる前から恥ずかしくてもう帰りたくなってしまった。


「そんな焦るようなことはないかと思われますが、ふふ。では、気を取り直して、試験会場へとご案内いたしますね。どうぞお乗りください。」


くぅ…如何にもできる女な感じの人からフォローされるとなかなかくるものがあるな…。

俺は羞恥心に耐えながら、エレベーターに乗り込み、試験を受ける教室へと向かう。


向かっている途中で誰ともすれ違うことはなかった。生徒はどうしてるのか聞いたところ、俺が試験を受けるということで今日は登校禁止としているらしい。



しばらく進むとある部屋の前で真壁さんが止まった。


「こちらが本日試験を受けていただく教室になります。」


中を覗いてみるとどうみても俺の知っている教室ではなかった。


「ほ、ほんとにここで受けるんですか?」


「そうですが、何か不都合がございましたか?ご不満でしたら、もう少し広い部屋を用意したしますが…」


「いやいや!ここで大丈夫です!」


なんと、部屋には専用のトイレが設置されており、その他にも冷蔵庫や電子レンジ、奥の方にはベッドやトイレの横には洗濯機とかも置いてあったことで誰かの部屋に来てしまったのではないかと思ってしまう。


その真ん中にぽつんと、座り心地のよさそうな椅子と机が置いてあるのがなかなかにシュールだった。


「では、試験はいつから開始いたしますか?着いたばかりですので休憩時間をとってもらっても構いませんが。」


「いえ、このまま始めていただいて構いません。すみませんが、荷物だけ預かってもらえますか。」


「えっと。よろしいのでしょうか?他人に荷物を預けるなど…」


「?真壁さんは試験監督ですから当たり前では?俺がカンニングとかするかもしれないですし。」


「いや、そうではなく…。いえ、御門様がよろしいのであればお預かりさせていただきます。」


「はい。お願いしますね。」


俺はニコッと微笑み真壁さんに鞄と上着を渡した。


「っ!!それでは!試験を始めさせていただきます!試験は国・数・英の3教科受けていただきます。制限時間はそれぞれ1時間ずつとなっておりますが、早く終わりましたら次の教科へと進むこともできますので、その際は遠慮なくおっしゃってください。」


ふむ。3教科ならなんとかなりそうだな。

昨日はなんとなくわかるぞこの問題!って感じだったから、実際どんなもんなんだろう。





さてと、いざ2度目の高校受験と行きますか!!

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