第16話 まさかの人物
前回の話の補足として、天川高校は正式には天川大学付属高等学校です。夕寧の内部進学が不鮮明な気がしたので補足させてください。
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撮影会を終え心身ともに疲れていたが、部屋に戻った俺は試験のための勉強をしようとひとまずテキストや自主学習用のオンラインデータを参照することにした。
すると、不思議なことに今までこの世界で勉強していたであろう内容がスッと頭に入ってきたのだ。
自分のものではない記憶に違和感を感じつつも、他の資料にも目を通してみると同じように学習した範囲については、できているという認識に変わっていく。
どうやら学力や、運動神経などはこの体の能力と、俺の元の能力が足されたものになるようだ。
どうせなら今までのこちらの世界での記憶も戻ればよかったと思ったが、まぁ贅沢は言えない。
でも俺は運動はできても勉強はひとなみだったため、このよくわからない補正のおかげでわざわざ勉強しなおす必要がなくなったのは嬉しい誤算だった。
姉さんからは勉強面で不安があるところは教えてくれると言われていたが、先ほどの影響により記憶が混じったことで、大学卒業レベルまでの学力を補えてしまった。
このことを姉さんに伝えると、「そうか…」と残念そうにしていた。なんかごめん姉さん。
次の日に、姉さんから理事長先生に話をしてもらい、希望があれば試験日を調整できるとのことだったので、それならばなるべく早くに受けたておきたかった俺は二日後にお願いしておいた。
♦♢♦
そしてあっという間に試験の日になった。
今日は母さんが学校まで送ってくれることになった。前回、姉さんに取られたから今回は自分が行くと聞かなかったらしい。でも俺としては送ってもらえるだけで助かるので、ありがたく送ってもらうことにした。
「うふふ~。悠ちゃんとデート~♪」
母さんは運転しながらご機嫌な様子で鼻歌を歌っている。
「今日は試験を受けに行くだけだからデートってものでもない気がするけど、ほんとに有給まで使ってよかったの?」
母さんはこの日のためにわざわざ有給を使っていたようで、そのことがありがたくもあり、少し申し訳なかった。
「当り前よ~悠ちゃんと出かけられるなら無理やりにでも使うわ~。それに、編入試験も立派な行事じゃないの。親は大事な息子の新たな一歩をお手伝いしたいものなのよ。」
「そっか…ありがとう母さん。」
俺は恥ずかしかったのと嬉しくて泣きそうだったので、顔を反対方向に向けてお礼を言った。
ほんとうにいい家族に恵まれてるなと改めて思った。
などと話しているとかなり遠いはずなのにやけに目立つ大きな建物が見えてきた。
「母さん、あの奥のでかい建物ってなに?なんかのテーマパーク?」
「ふふふ。こんな街中にテーマパークはないわよ~。あれが悠ちゃんが通うことになる天川高校よ~。」
はぁ!?あのバカでかい屋敷みたいなのが学校なのか??いくらなんでもでかすぎるんだが。
「あれが学校なのか…。まるでアニメなんかに出てくるお嬢様学校じゃないか。」
心の中で呟いたつもりが口に出てしまっていたようで、母さんに聞かれてしまう。
「あら。よく知ってるわね~。天川高校は共学になるまで世間的にお嬢様って呼ばれてる子たちが通う学校だったのよ~。でも、ある時に男子生徒が入学するってことになって、制度の見直しとか入学者の制限とかを行った結果、お嬢様学校から一転して、今の状態に落ち着いたのよ~。」
ふわふわした声で母さんは説明してくれる。
「じゃぁ俺が通えるかもしれないってことは、その男子生徒には感謝しなきゃだね。」
「ふふふ、そうね~。なら今度お礼しに行っちゃう?」
くすくすと笑いながら母さんが聞いてくる。
「ははは。知らない人なんだからお礼も何もないでしょ。」
「できるわよ~。だってそれ悠ちゃんのお父さんのことだもの。」
「へ?」
ん?母さん今なんて?
「懐かしいわ~あの時は男性が通うことになるからって、在校生に対して男性免疫テストとか実施されて、編入とか転入の手続きで大変だったんだから。まぁそのおかげで、悠樹さんと結婚して悠ちゃんを授かることができたんだから私は感謝してるんだけどね。ふふふ。お父さんの話はまた今度じっくり話してあげるわね。」
「え、あぁ。うん。また聞かせてよ…」
突然自分の父親が学校の歴史を変えただとか、両親の馴れ初めだとかを聞いてしまったせいで、学校に着くまでの数分間、母さんの話が頭に入ってこなかった。
こっちの世界の父さんって何者なんだよ…
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