第10話 イメチェン成功
「「「「いらっしゃいませ!」」」」
店内に入ると複数人のスタッフにお出迎えされた。
皆綺麗な人で驚いたが俺もぺこりと軽くお辞儀をして、奥の個室へと案内される。
「ふふ。すみません御門さん。男性のお客様がくるときは手の空いたスタッフ総出でお出迎えさせていただいているんです。男性にとっては迷惑かもしれませんが、やはり特別ですので。」
そういって吉野さんは椅子を引いてくれる。
そこから姉さんが合流するまでは他愛のない話をし、今日のカットの話へとうつった。
「では本日はどのように致しましょうか。今の長さもとても素敵なのですが、やはり前髪が少し邪魔に思えますね。」
「そうなんです。気づけば2年以上も放置してたみたいで、伸びきってるんで、もうバッサリと行こうかなぁと。吉野さんはどんな髪型が好きですか?やっぱりプロの人が似あうと思うものがいいかなぁと。」
今の俺の顔はなかなかに中性的なので以前のように短髪でツーブロックにしてしまうと背伸びした感じになってしまう。ここは吉野さんにお任せして、整えてもらおうという算段だ。考えるのがめんどくさいとかではない。ほんとだよ?
「はぇ?え、えぇとその、そうですね。バッサリと切ってしまっていいのなら、前髪は目元くらいまで切って、後ろは前下がりで少し刈り上げてサイドは顎くらいの長さにしましょうか。せっかく綺麗なメッシュも入っていますので。でもよろしいんですか?ほとんど私の好みになってしまうんですけど…」
おぉ~なるほど。ちょっと長めの方がこの顔には合うんだな。聞いてるだけでなんとなく想像できるからプロの表現力はすごいな。
「好みを聞いたのは僕なのでいいんですよ。ではそれでお願いできますか。あと申し訳ないんですが、メッシュの部分を自分で染めていて雑なんで、綺麗に染めていただけますかね…」
予約はしたもののカラーとなると時間も取られるが、元々すべての要望に応えられるようにと、吉野さんはこの日俺以外の予約をいれていないそうだ。そのため快く受けてくれた。
カットは順調に進み、シャンプーとカラーを済ませドライヤーで乾かしてもらってから軽くセットしてもらった。
シャンプー中にやけに柔らかいものが顔に当たり続けていたが、こういうのはだいたい腕とかお腹なのだ。ネットの記事で見たことあるし。でも一部固いところもあった気がするが、まぁ気のせいだろう。
「おぉ~頭軽い!めちゃくちゃすっきりした~!」
これはなかなかにイケメンなんじゃないか?長い時にはかなり女の子っぽかったが、短くなるだけでだいぶ男っぽくなるもんだなぁ。
「吉野さん、ありがとうございます!姉さん、どう?かっこよくなったかな?」
後ろを振り返って2人に聞いてみると、吉野さんはぼーっと俺の顔を見つめており、姉さんも俺から話を振るまでは同じようにぼーっとしていたようで、ハッとして咳き込んで「か、かっこいいぞ…」と答えてくれた。
「吉野さん?あれれ。どうですか〜似合ってますか?」
「ひゃ、ひゃい!!!ちょっても素敵でしゅ……♡はわぁ…完璧すぎ…♡」
お、おぉ。なんだ急に。カット中は普通に話してたし見てたのにどうしたんだ。
せっかくのかわいい顔がでへへへとだらしない顔になっている。ちょっと怖い。
「あぁそうだ、母さんに写真送るんだった。吉野さんよかったら一緒に撮ってくれませんか?今後もお世話になると思うので、担当してくれた人だよ~って紹介したくて。」
「へぁ!?いいいいいいいんですか!!?!しかも紹介なんて…そんな。お義母さまにご挨拶をしたほうがいいのかな…」
なんかおかあさまのニュアンスが違った気がする。まぁいいや。姉さんにスマホを渡して吉野さんの近くに行ってポーズをとる。
別に他意はない。そんな、吉野さんがタイプだから写真撮りたかったなんてそんなことはない。
パシャリ
「ありがとう姉さん~母さんにREENで送ってっと…」
「くっうらやましい…」
ボソリと呟く姉さんと顔を真っ赤にして座り込んでしまった吉野さんに苦笑しつつも店を出る準備をする。
お会計を済まして今後も予約をとれるようにと、吉野さんから連絡先をもらった。さっき撮った写真も送りたかったのでありがたく受けとっておいた。
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