僕が大人にならなかった理由

 

大きな声で店員さんを怒鳴りつけるお父さん。

いつもは優しいけれど、となりのお姉さんのうわさ話をするときは顔をくしゃくしゃにゆがめるお母さん。

勉強を教えてくれるかわりに僕の貯金箱からお小遣いをとりあげるお兄ちゃん。

僕が飼っている犬のケータを汚いというえいこ叔母さん。

僕が受けているいじめを見て見ぬふりをする先生。

通学中に出会う、よく野良猫に餌をやっているおじさん。

となりに一人で住んでいる、おなかが大きいお姉さん。

お酒を飲んだ後は、僕を殴ることを日課としているお父さん。

ケータの前足を踏んだあと、思い切り腹の横を蹴り上げたえいこ叔母さん。

ケータの餌に何か混ぜているのが見つかると、僕から逃げるように家を立ち去った叔母さん。

僕が必死で訴えても何もしてくれない先生。

文房具屋で万引きしていたのを僕が見つけたら、「親には黙っていろ」と殴るようになったお兄ちゃん。

ケータを「うるさい犬」といって水道のホースで叩いてくる隣のお姉さん。

餌代がばかにならないしもう可愛くないからケータを保健所にもっていこうと言うお母さん。

疥癬で目の周りが潰れた猫をたくさん増やすことが趣味のおじさん。

ケータが誰かに蹴られて弱っていてもずっと犬小屋に向けて水をかけてくる隣のお姉さん。

僕の態度が気に入らない、とクラスのみんながいる前で言い始めた先生。

ケータのお墓に、伸ばしたホースで水をかけてくる隣のお姉さん。

小さなことで別教室に呼び出しては僕の髪を掴んで怒るようになった先生。




ごめんなさい。

僕はもうケータのところに行きます。





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