関係者―●●れた女の霹靂―
興味がわかない授業の終わりを告げるチャイムが鳴り、先生が教室から出ていくと私――一ノ瀬和希は背を伸ばし、
(あーやっと終わった。さっさと部活いこーっと)
放課後の時間。クラスメイトは帰る準備をしていたり、私の様に部活へと向かったりと教室から人が少なくなっていく。
カバンに教科書とか詰めて、部室へと向かう。
(確か今日はミーティングがあるんだったっけなー。あんまり遅くならないといいんだけどなー)
今日の曜日を思い出し、部活後にミーティングがある事を思い出す。この日は普段より遅くなるから面倒だ。部活自体が嫌なわけでは無いが、なるべく早く上がりたい。部活後に寄り道をする為だ。
(今日は何にするかなー。確か期間限定でスイーツ系の何か始まるとか言ってたから、それにしようかなー)
特定の曜日だけだが、私はとあるファーストフード店に寄り道する事になっている。
(確か何種類か出るんだったよな。いくつか頼んで悟と分け合うか)
新商品の事を考えながら、幼馴染の男子の事を思い出す。男のくせに結構甘い物も食うから、シェアも付き合ってくれるだろう。
寄り道は、この幼馴染――牧田悟の為にやっている。悟の両親は共働きで、平日家にいる事は殆ど無い。その為夕飯は基本外食になるけど、一人で食べるのは寂しそうだからと付き合ってる。ママなんかは『うちに呼べばいいのに』と言ってるが、悟が遠慮している。
高校に入ってからこの寄り道をしているが、この時間が私は好きだった。ただ悟と駄弁るだけなのだが、それが楽しい。悟とは家が近所で、幼稚園の頃からずっと関係は続いている。中学くらいから私が部活に入った事もありあまり遊ばなくなったけど、それでも疎遠とまではいってないし何だかんだ仲は良いと思う。
この寄り道も、高校じゃクラスが違うから数少ない一緒に居られる時間だ。本当は毎日付き合いたいけど……部活を理由に曜日を決めて付き合うことにした。最初の内は毎日だったけど、その結果体重が大変な事になったから、なんて言えない。あの時は本当落とすのに苦労した……なんで悟は平気なんだろう。太った感じは一切ないし、男だからか? くそ、羨ましい。
「――一ノ瀬さん、だよね? ちょっといいかな?」
そんな事を考えて歩いていると、声をかけられた。
茶色い短髪の女子。――誰だろう? 知らない女子だ。多分同学年だけど――って、何その胸? でっか……同い年なのに、何で私は……やっぱ悟も大きい方が好きなのかな……これでも牛乳は結構飲む方――って何考えてるんだ私は。
「一ノ瀬さん?」
「え、あ、な、何かな?」
いけないいけない。目の前の女子に顔を覗き込まれて考えるのを止める。
目の前の女子は私から見ても可愛らしい感じだった。遊んでいる、という感じまではいかないけどちょっとギャルっぽい。男子に人気有りそうな感じ。友達の友達とかにいたっけ? だめだ、思い出せない。
そんな事を考えていると、女子は笑みを浮かべた。
「あ、ごめんねいきなり話しかけて。一ノ瀬さんと話すのは初めてだから。驚かせちゃったかな?」
やっぱり話すのは初めてか。覚えてないのも無理はない。
「えっと、何の用かな?」
私が言うと、女子は浮かべていた笑みから少し考えるような表情に変える。
「その、さ。ちょっと聞きたい事があるんだけど……牧田君と一ノ瀬さんって、付き合ってるの?」
「――ふぇ?」
思わず変な声が出た。私と悟が、付き合ってる?
「い、いやいやいやいや!」
慌てて私が首を横に振る。な、何でそんな事に!?
「違うの? いや、そのさ、牧田君と一ノ瀬さんがよく一緒にハンバーガー店にいるの見てさ、楽しそうだから付き合ってるのかなーって思って」
「あ、ああ、う、うん、一緒にいるけど……」
寄り道を見られていたのか。そう思うと、顔が熱くなるのを感じた。見られていた気恥ずかしさと、付き合っているように見られていたというのが……その、ちょっと嬉しいなんて感じていて。
「うーん、付き合ってないなら別にいいのかな」
女子の声に、浮かれた頭が少し冷静になれた。何でこの女子はそんな事を言って来たのか。
「あ、別に私が牧田君に告るとかじゃないから、そこは安心していいよー」
「な、何で安心なんて……」
「え、だって一ノ瀬さん、牧田君の事好きなんじゃないの?」
「すっ――」
「一ノ瀬さんわかりやすいねーかわいー」
女子にからかう様に言われて、また顔が熱くある感覚があった。
――確かに、私は悟の事が好きだ。昔からの付き合いだから一緒に居て楽しいし。けどそんなわかりやすい態度は出した覚えはない……出してないよね?
「あー、でもそれなら一ノ瀬さんに話しておかないと駄目かー……」
「何の話?」
女子は言葉を選んでいるようだったけど、少し言い辛そうにして言った。
「あのね、落ち着いて聞いてね? 一ノ瀬さんが居ない時って牧田君、いつも別の女の子といるんだ。だから最初は浮気かなーって思って、一ノ瀬さんに教えないと、って思ったんだけど……」
「――は?」
衝撃が、私の中に走った。
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