当事者―●●れた男の衝動―

「お前、本当色々台無しだよ」


 ジト目で和希が俺を睨み付ける。


「つい本音が漏れた。反省はあんまりしてない」

「そこは反省しろ……てか、貧乳フェチかよお前」


 そう言って和希が俺のデコをぺしっと叩く。

 まぁ別に貧乳ナイ乳フェチってわけじゃない。和希の身体だから好きって事だ。

 もっと詳しく言うと、密かに貧乳ぺったんこを気にしている和希が好きなわけで。今も「そっかー、貧乳フェチかー」と人をからかっているように見せて、実は「よかった……巨乳好き以外認めないとかじゃなくて……」とか内心ほっとしている様子とかが可愛いわけで。


「で、返事は?」

「……ふぇ?」


 完全に虚を突かれたように、和希が間の抜けた声を上げる。


「いや、返事。俺、和希に告白した。それに対する答えアンサー、貰ってない。OK?」

「え、あの、わ、私、こっ告白?」

「そう、好きって告った。先に言っておくけど、からかってるわけでも冗談とかでもないから。後さっき男っぽい、って和希言ってたけどさ、ちゃんと女の子として見てるからね俺」

「おっおま――」


 ここまで来たら自棄だ。もう色々暴露してやれ、とばかりに言ってやる。

 そうですよ、ちゃんとそう言う性的な目で見てますよ。夜だって、その、ね? さすがにそこまでは言えないけど。


「……本当に、私でいいの?」

「和希がいいの」

「私、それこそ男だって勘違いされるような奴だよ?」

「バレンタイン俺以上にチョコ貰ってたよね。あ、前にくれたチョコ美味しかったよ?」

「ガサツだし、可愛げはないし……」

「俺がぼっち飯になっても寂しくない様に、ってわざわざ付き合ってくれてるじゃん。気遣い超出来てる。後そうやってもじもじしてる所とか、超可愛いと俺は思います」


 そう言うと、また和希は「あうあう」と動揺して言葉にならない声を漏らす。そして俯いたと思うと、上目遣いで俺を見てぽつりと呟くように言った。


「――わ、私も、その、えっと」


 つっかえながら何か言おうとする和希を、俺は「うん」とだけ言って待つ。

 何度も何度も言葉を詰まらせて、やがて和希は決意した様に顔を上げて言った。


「わ、私も、ずっと、悟のこと、しゅきでした――」


 噛んだ。最後の最後で噛んだ。

 自分でもわかっているようで、更に顔が赤くなる。これ以上赤くなる? っていうくらい。

 顔はゆで上がった様に真っ赤で、涙目で、プルプルと全身を震わせる姿。

 我慢が出来なかった。なので、こんなことするのも仕方ないと思う。


 ――衝動的に、和希にキスしてた。

 それもこれも和希が可愛いのが悪い。俺は悪くない。可愛いのがいけないんだ。


 軽くちょっと触れ合う程度の物だったが、和希を発狂させるには十分だった。

 ――奇声を上げたりとか、それで店員さんが来たりとか散々な事ちょっとした騒ぎになった。

 やっぱりこの店、もう来れない。他の店探さないと、早急に。

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