第三者―とあるファーストフード店員の会話・2―
ソファ掃除が終わり、カウンター席清掃。ここはそこまでやる事は多くないのでさっと終わった。
ふと、外を見るとカウンター席から店の前の通りが良く見える事に今更気づいた。ここで座っているからあの寝取り野郎に目をつけられたのかな。椎名ちゃんの話だと、ここに並んで座っている事が多かったらしいし。
そういや彼女の方の名前は知らない。椎名ちゃんもよく聞き取れなかったらしい。まぁ、男見る目ないよねその子。そんな彼氏いるっていうのに寄ってくる男なんて碌なもんじゃないっての。
そんな事を考えながら作業をしていたら、あっという間に終わった。
「清掃終わりましたー」
「あ、ありがとうね。ちょっと休憩入っていいよ、今暇だし」
清掃道具を仕舞ってから報告したら、パートさんにそのように言われたので、飲み物を持って移動。休憩の際は飲んでもいい事になっているのだ。
今日は暇なまま終わりかな。そんな事を考えながら、休憩場所を兼ねた事務所へ入る。
「お疲れですー」
「あ、お疲れっすー」
一声かけて入ると、中から男性の声。同じバイトの三田さんだ。確かフリーターだとか。
「関根さん休憩? 俺戻れって言ってた?」
「いやー、特に何にも聞いてないですねー。お客さん全然ですし、まだ休憩で大丈夫じゃないですか?」
「そっか。じゃあもうちょっと」
そう言って三田さんは手元のジュースを一口飲む。
「そういや、昨日関根さん休みだったんだっけ」
「そうなんです。ちょっと私の方が用事があって。椎名ちゃんに変わってもらって」
「あ、そうなの? 会わなかったけど、入れ替えのタイミングだったのかな?」
「ありゃ、残念」
「残念?」
「いえ、こっちの話で」
誤魔化すと、三田さんが不思議そうに首を傾げていた。椎名ちゃん、三田さんの事好きだからねぇ。シフト一緒になれば良かったけど、タイミング合わなかったか。まぁ、本人には秘密、って事なのでこれ以上は言わないでおこう。
「関根さんも聞いたと思うけど、昨日凄かったんだよ。あんな現場って、そう出くわさないからねぇ、貴重な体験だったなぁ」
しみじみと言う三田さん。おや、三田さんも野次馬根性あるのかね?
「話は聞いてますよ。修羅場だったって」
「修羅場? まぁ、修羅場っちゃ修羅場だよなぁ……わんわん泣いてたし」
「泣いてた?」
あれ、椎名ちゃんからそういった話は聞いてない。サトルって子はずっと戸惑って呆けてた、って聞いてたけど。あ、でも後から段々と実感して泣いたって話か?
「まぁ、今日は来てないみたいだけどね」
「話に聞いただけですけど、あんなことがあったら中々来られないでしょう」
「まぁ、照れ臭いだろうしね。でも彼らには幸せになってもらいたいねぇ」
「ん? 彼ら」
え、何で? 彼らって、寝取った奴の事? サトル君だけなら『ら』はつかないよね? それに照れ臭い?
「あの、三田さん。昨日の話って、常連の高校生の話ですよね?」
「え、そうだよ。高校生の話」
あれ、間違ってない?
「ちょっと私聞いた話と違うかもしれないんですけど、どういう話か教えてくれます?」
「ん? また別に騒動があったのかな……まぁ、俺が来た後の話なんだけどね」
三田さんの話を聞いて、私は驚く事となる。
「――告白?」
「そう、告白」
「……え、浮気報告ではなく?」
「いやいや、愛の告白」
三田さんはふざけた様子は無かった。
――あの、何で私いない時に限って
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