第三者―とあるファーストフード店員の思案―
「あ、関根さん清掃お願いしていい?」
「わかりましたー」
パートさんに言われて、清掃道具を持って店内清掃。丁度今はお客さんが少ない時間帯だ。それでも時給は発生しているから、働かねば。
床もだが、見えない所――座席のソファ部分に結構食べこぼしだとかが落ちているので、見逃さない様に要チェック。おっと、ソファの隙間にポテト隠してある。イタズラか、
(碌な奴じゃない、と言えば――)
先程椎名ちゃんから聞いた、修羅場。私が休みの時に限って起こるという、
話を聞いていて、高校の頃に居た男の事を思い出した。名前は――何だっけ? 岸が付いていたような気がする。きしょい、って理由だけで覚えてた。多分岸だ。そういう事にしよう。
で、その岸(仮)って男。見た目は
彼氏持ちとわかるとアプローチかけてくるんだわ。私みたいに彼氏一筋って子はその態度が気持ち悪くて近寄りたくもない、ってなるんだけど。それでもコロッと騙されて二股かけちゃうような子も結構いた。結構大人しい子が騙されてたような。気遣いってのも正直上っ面にしか感じなかったなぁ。
あ、男子からの評価は悪かったね。これ彼氏情報。気の弱い男子の彼女を奪って、それを見せつけて悦に浸ってるそうな。色々と修羅場を作ってきたようで、それも自慢してたとか。ただのクズじゃん。何が良いんだか。
私もまぁ色々あって彼氏が出来て、そこから一時期粘着されたんだよねぇ……
「……そういや」
ソファを掃除しながら、ふと気づく。今日はその件の男子高校生――被害者の子は来ていない。確か名前はサトル、って言うのを聞いた。
別に知り合いでもなんでもない、ただのバイト先の常連さん。注文を受けるだけしか接点は無いが、流石に同情する。
(でも、彼女が居たっていうのは知らなかったなぁ)
シフトに入っている時にも来る子だったが、私が知っている限りではソファ席を使用していた。1人で黙々と食事をしていると、遅れて友達がやってくる。その子の名前は……えっと、確か……カズキ? そう言っていたような気が。サトルって子が制服なのに、あの子はいっつもジャージ姿だったっけ。ショートカットで、運動部っぽい子って印象。
カズキって子が話をして、サトルって子が聞く側に徹している光景を目にすることが多かった。
(でももう来ないだろうなぁ)
そんな騒動があったとなれば、もう二度と来たくないだろう。来る度に嫌な事を思い出してしまうだろうから。
それもこれも岸(仮)が悪い――ってアイツだって決まったわけじゃないけど。
あんな寝取り野郎がそこかしこに居るってのも嫌だなぁ。でもアイツが近くにいるっていうのも嫌だわ。
うん、とりあえず似たクズが居るって事で結論付けておこう。
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