第29話 公爵家からの使いと会話しよう!

「戦力?」


「はい。レオン様はともかくとして、エマ様、クラリッサ様に関しましては、お手紙を頂いております」


 ガンフは懐から2通の手紙を取り出すと、エマとクラリッサに渡した。2人は手紙に書かれた文字や押し印を確認する。


「確かにこれ、私の父上からのやつだね〜」


「同じく」


「で、なんて書いてあるんだ?」


 あまり首を突っ込みたくはないが、仕方ない。


「ええっとね〜。グリーンフェルト男爵家は戦時下により、ランバルド公爵家の指揮下に入る。よって、ミア・ランバルド、クラリッサ・シュメール、レオン・マーシャスと共に戦闘に参加せよ。だって〜」


「私のも、似たような内容。フンボルト自由市議会は戦時下により、ランバルド公爵家の指揮下に入る。よって、ミア・ランバルド、エマ・グリーンフェルト、レオン・マーシャスと共に戦闘に参加せよ。とのこと」


「戦時下? それにどうして僕の名前が!?」


「おかしなことではないでしょう。学園でいざこざがあったと聞いたら、普通は自分の子供たちがどうなったのか探りに行くわけですから。そんな中、あなたがミアお嬢様方と冒険者パーティを組んでいれば、あなたの身元を探ろうとするのは当たり前です」


「なるほどな。だけど、どうして僕までもが名指しで戦力扱いされてるんだ?」


「あなたも一応爵位はお持ちですし、付与術士は有用だと判断されたのでは。おまけに、レオン様もミアお嬢様のパーティメンバーなのですし」


「爵位なんて、貧乏男爵だった親から受け継いだもので、領地も権力もほぼないようなものだけどな。でも分かったよ。どのみち、彼女たちを見捨てる気はなかったし、ガンフ、あなたの話を聞こう」


「有り難きお言葉。ではまず、戦時下であるということですが……」


「まさか、また隣国と戦争が始まったとでも言うの!?」


「そうではありません。寧ろ、婚姻関係が結ばれているため、友好的なくらいです。この国が戦っているのは、人ではなく魔物なのです」


「500年に一度と言われる魔物の大量発生スタンピードは20年前に集結したはず」


「ええ。魔物の大量発生スタンピードは基本的に、自然界の魔力が増えすぎて、魔物たちが活性化することで起こります。しかし、今回発生したのは、アンデッドの大量発生なのです」


「アンデッドの大量発生ってまじか。しかしどうして……」


 アンデッドというのは、人間や魔物、動物などの死体が瘴気にあてられることによって発生する。なので、戦場などでは、死体を焼却するものだ。


「最初の異変は、冒険者ギルドからランバルド公爵家に、ペレ砂漠奥地に生息する魔物が、外縁部にまで進出しているという報告からでした……」


 恐らく、僕がマイヤー師匠に報告したやつだろう。その後報告に基づき、冒険者ギルドとランバルド公爵家が共同で調査隊を派遣したらしい。


 ペレ砂漠はランバルド公爵家の領地だからな。異常があったときては放置して置けなかったのだろう。調査隊は2週間程で戻ってきたという。


「ただし、隊員の殆どが死傷した状態でですが」


 彼らの多くは、ペレ砂漠にてアンデッドの群れに襲われたそうだ。


「にしても、アンデッドの群れってそんなに脅威なのぉ? 白魔法を使えばある程度対抗できそうだけど」


「もちろん、調査隊のメンバーにも白魔法の使い手はいましたよ。けれど、奴ら――アンデッドたちには統率者がおり、統率者によって彼らが連携して攻撃して来たのですよ」


「アンデッドが連携!? そんな話は聴いたことがないぞ」


「でしょうね。何しろ、群れの統率者はエルダーリッチだったのですから」


「リッチって、高度な魔法を駆使してアンデッドとなった魔法士のことだよな。エルダーリッチってことは、そいつの強化版みたいなものか?」


「ご名答です。こちらをご覧下さい」


 ガンフが古びた冊子を机の上に置くと、ページをめくった。


 そのページには古代ルーン文字で書かれた文書とともに、禍々しい雰囲気のアンデッドが描かれていた。


 アンデッドは人間を丁度魔法で殺そうとしているシーンとして描かれている。


 アンデッドの見た目は、ローブを被ったスケルトンといったところだろうか。しかし、殺されかけている人間よりも3倍程度は大きそうだな。


「これは古代に使われていた魔物の図鑑です。当時は今よりも魔力濃度が濃かったために、現在よりも強力な魔物がいたらしいのですよ。エルダーリッチは、その中でもかなり強力な部類だとか」


「しかし、そんなやつがどうして今更現れたんだ?」


「詳しいことは分かっていません。けれど、調査隊がアンデッドに襲われたのは、遺跡にあった屋敷の庭。そこにある祭壇を調査していたところ、エルダーリッチ率いるアンデッドたちに襲われたと」

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