第28話 ランクを手に入れよう!

「まずはパーティ全体の等級なんだけどね、ギルドの会議の結果、『雷光の追放者』たちはミスリル等級に決まったよ」


「いきなりミスリル級!? 凄いじゃない!」


「ああ、こんなことはギルド始まって以来初めての快挙だよ。ただまぁ、ミスリル級冒険者たちを生きた状態で連れてきたんだ。正当な評価なんじゃないかね」


「そう。まぁ、これもレオンがいてくれたおかげね! 彼はオリハルコン級冒険者なのだし」


「坊やだけの功績じゃないよ。なにしろ、こやつは付与術士なわけだからね。単体じゃ役に立たない。だから、あんたたちの能力もそこそこ高いと判断させて貰ったよ。ミア・ランバルド、エマ・グリーンフェルト、クラリッサ・シュメール。あんたたちの冒険者ランクは全員金級とする」


 ミアたちの冒険者プレートの文字が金色に輝くものに取り替えられる。


「これが金級冒険者のプレートかぁ〜」


 エマがしみじみとした口調で呟きながら、冒険者プレートを眺める。


「……///」


 クラリッサも無言だが、そこ顔には笑みが浮かんでいる。


 ふぅ。これでなんとか、僕らは冒険者としてやっていけそうだな。サンタリア魔法学園を追放された時はどうなることかと思ったが。ん? なにか忘れているような……。


「そうだ! 結局、ペレ砂漠の魔物が活性化している理由が分かっていないままじゃないか!?」


 砂漠の真ん中に現れた遺跡やらダンジョンのインパクトが強くて、すっかり忘れていたぞ。


「急に叫んでどうしたんだい?」


「実はだな……」


「ふん。確かにそれはおかしいねぇ。基本的に遺跡やダンジョンの魔物というのは縄張りを持っているから、外に出て行くとは思えないし。分かった。調べておくよ」



 ◆❖◇◇❖◆



「おいおい、あいつら、もしかして『雷光の追放者』じゃないか?」


「本当だ。ったく、美少女たちに囲まれやがって。オリハルコン級冒険者様は羨ましいぜ」


 酒を飲んでいる冒険者たちの横を素通りしながら、僕たちはギルドの受付に向かう。


 相変わらず周囲の視線を感じるが、これはもうどうしようもないと諦め始めた。


「依頼達成したからよろしく〜」


「承知しました」


 受付嬢のマリーさんが来て、手続きが始まる。僕らは狩ってきた魔物の素材をテーブルに並べた。


「ええと、今回の依頼はレッドワイバーン一頭の討伐!?」


「そう。廃鉱になった鉱山に住み着いたらしくて、私たちが討伐した」


 その時、冒険者ギルドの入り口から、一頭のレッドワイバーンが運ばれてくる。もちろん、僕たちが倒した個体だ。


「おいおい、あれって、レッドワイバーンだよな?」


「ああ、15メートルはあるぞ。おっかねぇ」


 再びギルドが喧騒に包まれた。


「討伐個体を確認致しました。それでは、依頼達成の報酬です」


 大金貨3枚が渡される。


「これだけあれば、宿を借りるのをやめて、パーティ専用の拠点も買えそうね!」


「ははは。確かにそれも悪くは無いな」


「ミアお嬢様、ミア・ランバルドお嬢様はいらっしゃりますか!」


 突然、ミアのことを呼ぶ声がギルド中に響き渡る。声の主は、黒っぽいスーツに身を包んだ、品のある青年だった。


「あなたはガンフ!?」


「お嬢様、やはりこちらにいらっしゃいましたか」


 青年はミアに近づくと、片膝を地面につき、頭を下げた。


「ご無沙汰しておりました」


「そうね。一体何しに来たのかしら? 実家に戻れと言われても、行く気は無いわよ! 私は暫く冒険者をする予定だもの」


「いえ、違います。私は別にお嬢様を無理やり連れ戻しに来たのではありません。一度ランバルド公爵様の元に来ていただきたいとは考えておりますが。どうか、どうかよろしくお願いいたします」


 ガンフはそのまま土下座する。


「ちょっと。こんなところで土下座なんて止めなさいよ!」


「こいつは一体何者なんだ? ランバルド公爵家の人間ということは分かる」


「ガンフは私の家の実力行使部……使用人よ」


 それだけ言うと、ミアは僕の耳元に顔を近づけてくる。彼女は小声で話し始めた。


「周りに人がいるから言えなかったけれど、彼はランバルド家お抱えの殺し屋だわ」


 ふむ。なんかきな臭くなって来たな。


 僕らは、いつも泊まっている純白亭の部屋に向かう。


 さすがに、冒険者ギルドでガンフの話を聞くのは不味いと思ったし、彼自身もそれを望んでいたからな。


「サイレント!」


 ガンフによって、薄い緑色の魔力が僕らの周囲を包み込んだ。


「これは?」


「外に音が漏れなくする魔法ですよ。誰かに聞かれたら、悪気がなかったとしても殺さざるを得ません」


「そんな魔法を使う機会なんて早々無さそうなもんだが……。よく知ってるな」


「何が言いたい?」


 ギロリと、眼孔を鋭く光らせながらガンフは睨んでくる。声も心無しか低いトーンへと変わったように聞こえる。おお。怖い怖い。


「いや、なんでもないよ。ところで、僕らもここに居て良いのか? あまり公爵家のことに首を突っ込むつもりはないんだが……。人に聞かれたくない話なんだろ?」


「本来であれば、極秘にしたいところではあります。しかし、そういう訳にもいかないのですよ。あなた方には、お嬢様とともに戦力になって頂きたいですし」

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