第25話 紅蓮の風を助けよう!
レオンの叫び声が響き渡ると同時に――。
「
クラリッサが大きめの矢を放つ。大きな矢は複数に分裂し、スパイダーゾンビたちを燃え上がらせた。分厚い外殻もものともせずに炎上する。
レオンの補助魔法により、クラリッサの攻撃力が上昇しているためだ。
燃え上がり、弱ったところをレオンがショートソードでザクザクと切り裂いていく。
一方――。
「ぐああああああぁぁぁ!!!」
ドミニクを嵌めたつもりが、失敗してしまったキリングゾンビはすっかり怒り狂う。
キリングゾンビが視線を下に向けると、先程捉えた猫人族の拳闘士が見える。代わりにこいつを殺してしまおう。
そのように考えたキリングゾンビは殺気立ち、手に持った複数の武器をサラに振り下ろそうとした。
「させないわ!」
ミアのロングソードと、キリングゾンビの凶刃が交差する。両者はしばらくの間鍔迫り合いを続けていたが、やがて――。
「エマ!」
「任せて〜。
キリングゾンビの顔付近に光球が出現、周囲を真昼のように照らしながら破裂する。キリングゾンビは思わず目をしかめた。
その間に、ミアはキリングゾンビの頭部まで跳躍し、ロングソードを突き刺した。追い打ちをかけるようにして、ミアはロングソードに炎を纏わせる。
弱点である頭部を集中的に攻撃されたキリングゾンビはピクピクと痙攣すると、倒れ伏してそのまま動かなくなった。
「助かった……のか……?」
リオが放心したように呟く。
「そのようですね」
アンネが頷いた。
「よ、良かった……」
殺されかけたドミニクも、安心しきった声をだす。
「しかし、あんた達は一体何者なんだい?」
「私たちは冒険者パーティ、『雷光の追放者』よ。あなた達がミスリル級冒険者パーティ『紅蓮の風』で良いのよね? レオン」
「ああ、間違いない。久しぶりだなリオ」
僕は活発そうな見た目の剣士に話しかけた。
「な!? レオンじゃないか!? いつの間に冒険者に復帰していたのか!?」
「レオンですって!」
「え? あのレオンさん?」
「レオンだと!?」
リオの言葉に、『紅蓮の風』の他のメンバーも驚いたような反応をする。
「うん。復帰したのはかなり最近だけどな」
僕は直近のできごとを手短に話した。
「そんなことがあったのかよ。学園は学園で色々大変なんだな。痛ててて……。」
リオはふくらはぎの部分を抑える。見ると、先程の戦闘で負傷したのか、血が流れていた。
「怪我してるのなら、私が治すよ〜」
エマは白魔法によって、リオの出血を止めた。
「すげぇ! あんたは白魔法士なのか。ありがとう。助かった。パーティに回復役は居ない上に、回復ポーションは全て使い切ってしまっていたからな」
「エマ、リオたち全員の治療はできるか?」
「大丈夫だよ〜。まだまだ魔力は余ってるから」
こうして、エマは『紅蓮の風』のメンバー全員の治療を行う。全員重症とはいかないものの、至る所に傷を負っていた。
「ふぅ。すまないねぇ。こうして救出しに来てもらったあげく、治療して貰い、その上で飯まで貰うなんて」
しみじみとした口調で喋りつつ、サラは黒パンに齧り付く。
治療を終えた僕らは今、黒パンをリオたちに振舞っていた。
「いや、こちらこそ、大したものを用意できなくてすまん。探索範囲を広げるために、荷物はなるべく少なくする必要があったんだ」
「なにをおっしゃるんですか。レオンさん。あなたが助けに来てくれただけでも、僕らは嬉しいのですよ」
自信なさげな顔をこちらに向けてきたのは魔法士のドミニクだ。
「そう言ってくれるのは有難い。ところで、君たち『紅蓮の風』はどうしてこんな場所にいるんだ? 僕らはこのポーチを遺跡の中で偶然見つけて、ダンジョンの奥深くまで探索していたんだが」
僕はリオに小型のポーチを渡してやる。
「おっ! これは俺が遺跡でアンデッド達に襲われた時に落としたやつじゃないか。戻って来て良かった」
リオは感慨深くポーチを受け取る。
「それで……どうして俺たちがこんな場所に居るかなんだが……」
リオは淡々と話し出した。
彼ら『紅蓮の風』は、冒険者ギルドから、ペレ砂漠にて複数人の冒険者たちが消息不明になっていることへの調査を依頼され、受領した。
行方不明になった冒険者たちの多くは比較的初級の冒険者たちだった。なので最初のうち、リオたちはペレ砂漠外縁部の捜索をしていたらしい。
しかし、行方不明者たちの捜索は難航した。焚き火の後などは見つけられるものの、その後の消息が分からなくなってしまうことが多かったのだ。
困った紅蓮の風の面々は、もしかしたら行方不明者たちはペレ砂漠の奥地に行ったのかもしれないと考えて砂漠の中心部へと進んだ。
そんな中で、偶然あの遺跡を発見したらしい。彼らも遺跡の中へ足を踏み入れた後、トラップに引っかかり、ダンジョンの奥底へと引きづりこまれる。
ダンジョンから脱出しようとした彼らが、探索する中で見つけたのは――。
「数人の冒険者たちの遺体があったんだ。このダンジョンの中に」
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