第26話 ダンジョンから脱出しよう!
「冒険者たちがどうしてそんな場所に……」
「うん。俺たちも不思議だったよ。なにせ、彼らの冒険者等級はほぼ鉄〜銀等級だったらな。だけど、実は遺体に紛れて、一人の冒険者はまだ生きていたんだ。まぁ、瀕死だったから、そいつもすぐに死んでしまったけどな」
ただ、彼が死ぬ前に何があったのかを話してくれたおかげで、何が起きたのかが分かったらしい。
それによると、彼は普通にペレ砂漠の外縁部にて、酒精の狩りをしていた。そんな中、パーティ全員が落とし穴にはまり、ダンジョンへと落とされてしまう。
彼らがダンジョンの魔物たちを相手にするのは厳しく、全滅してしまう。そんな中、一人だけ生き残っているところをリオたちに発見された。
「なるほどな」
僕は鷹揚にして頷く。
「このダンジョンは、ペレ砂漠全体に広がっているんだな。しかし、ダンジョン内のトラップが砂漠や遺跡にもあるとは……。普通、ダンジョンのトラップはダンジョン内にしか存在しないはずなんだが」
「それはあたし達も疑問に思ってたんだよ」
アンネが相槌を打つ。
「だから、俺たちは、あの遺跡の住民たちがダンジョンに何かしらの細工をしたんじゃないかと仮定したんだ。そこで、ダンジョン内の中心部を探索してみた所、本来はダンジョン内に生成されるべきトラップを、ダンジョン外に拡散する施設があって、未だに稼働していた。おそらく、休眠化してたダンジョンが突然活性化したせいで、こういった遺跡関連の施設も復活したんだと思う。施設は俺らが破壊したから、もう大丈夫だよ」
「なら、もう砂漠で行方不明者が増えることは無さそうだな」
「にしても、どうして遺跡の住民たちはそんなことをしたのかしら?」
「あくまで推測なのですが」
アンネが語る。
「外敵の侵入を阻むためかと。侵入者たちがダンジョンの中に落下してしまえば、町が破壊されるリスクが大幅に減りますし」
「そういうことなのね」
「まぁ、それはともかく、これ以上ペレ砂漠で行方不明者が増えないのは良い事だ。あとはこのダンジョンから帰還する道を探すだけだな」
「あー、一応、ダンジョンから抜けだすための通路は見つけているんだ……ただ……」
「ただ? 何かあるって言うのか?」
「着いてくれば分かるさ」
◆❖◇◇❖◆
紅蓮の風の案内の元、僕たち雷光の追放者たちはダンジョンの脱出口へと進む。脱出口の前は大きな空間となっている。
「ぐぎゃあああああああああああ!!!!!」
その空間の中を、大きな黒い影が闊歩していた。禍々しい瘴気を発し、口の中にはサメのような鋭い牙を覗かせている。
全長は15メートルほどだと思われるものの、大きな翼のせいで、それより大きく見える。
「あれは……アンデッドドラゴンか」
「ここはさっきの場所よりも上の方でしょ? 更に、アンデッドドラゴンの先にある光、あれは間違いなく太陽の陽光。だから確実にここが出口だと思う」
「なるほど。あいつは遺跡のガーディアンみたいなものか。微かに風の流れも感じるし、アンデッドドラゴンさえ倒せれば脱出できそうだな」
「でもよ、レオン。どうやって倒す? 一度俺らはアンデッドドラゴンに挑戦したんだが、刃で切り裂いても、魔法で燃やそうとしてもすぐに傷を癒してしまうせいで倒せなかったぞ」
「うーん。そうだな」
◆❖◇◇❖◆
「視力強化、聴力強化、身体能力強化、魔法攻撃力強化、物理防御力強化、魔法防護力強化付与!」
僕は全員を強化する。すると――。
「いっくよ〜。ホーリーエンチャント!」
エマが魔法を発動させ、今度は全員の武器に白魔法特有の魔力が付与された。白魔法は治癒など、『生』の属性を持つ。
対して、アンデッド系の魔物が持つ魔法は『死』の属性を持っている。
だから、『生』属性の付与された武器でアンデッドを攻撃すると、通常より多くのダメージを与えられるのだ。
なにより、アンデッドドラゴンは自分の魔力を使って身体を修復するが、『生』属性の攻撃でできた傷を癒すには通常よりも時間がかかる。
この性質を利用してアンデッドドラゴンを攻撃すれば、かなり楽に倒せるはずだ。
「先生、私たちはこれからかなりの魔力を消費するから、あまり援護はできない」
「了解。まぁ、多分なんとかなるだろ。取り敢えず、初撃は頼む」
「分かった」
クラリッサは背中から弓を取りだすと、通路とアンデッドドラゴンの居る境界まで移動した。横にはアンネとドミニクが立っている。
「
彼女は自身が修得している中で最も強力な狙撃魔法を放った。
「い、行きます!
「私も!
続けざまにドミニクとアンネの2人も魔法を放つ。ドミニクにより、硬度が高く、星型で殺傷力のある砂が空気中に舞った。
そして、アンネの風魔法により、大量の火矢と砂は煽られて加速する。
「ぐぎゃ!?」
クラリッサたちの攻撃は全て、アンデッドドラゴンに襲いかかった。
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