第21話 夢から目覚めよう!
僕は慌ててショートソードで長槍を受け止める。しかし、オークキングの腕力にはかなわず、軽く後ろへ吹き飛ばされた。
(うおっ! 手がビリビリするな)
吹き飛ばされたものの、補助魔法で強化されているため、僕はあっさりと着地する。
「こっちよ!」
ミアが自分に注意を引きつけ、オークキングと剣戟を繰り返す。
両者は拮抗しているものの、ミアは時折ファイアーボールをオークキングに放つことでダメージを与えている。
しかし、決定打はだせずにいた。速射性重視の魔法は威力が下がるからな。仕方ない。
おまけに、ロングソードでオークキングを切りつけることも難しいだろう。長槍とロングソードでは、長槍の方がリーチが上だ。
ならば――。
僕は目配せをする。ミアは意図をしっかり汲んでくらたようだ。長槍の柄とロングソードの刃を交差させ、わざと吹き飛ばされる。
僕はオークキングにスローイングナイフを投擲する。スローイングナイフは空中で回転しやがら飛翔し、オークキングの右耳に刺さった。
「ブモオオオオオ!!!」
オークキングはいきり立ち、僕に向けて殺意を向ける。おかげで、オークキングに隙が生まれるが、ミアはそれを逃さない。
ミアはオークキングの後ろに行き、ロングソードで首を切りつける。オークキングの首は身体から切り離され、地面に転がった。
「ハァハァ。勝ったわ!」
◆❖◇◇❖◆
僕は目を開く。テントの入り口からは朝日の淡い光が漏れている。僕の右側にはミアとクラリッサが、左側にはエマが眠っていた。
僕はエマの頭をそっと撫でてやる。
昔のことを考えていたら、いつの間にか眠っていたらしい。オークキングを倒した後、確か僕たちは精霊の泉に戻った。
そして朝が明けると共に泉に聖水が産み出され、僕たちは目的を果たすことができ、エマの母親に聖水を渡すことができた。
結局、エマの母親は体力が落ちすぎていたため、聖水は彼女の命を延命させることしかできなかった。
でも、エマと母親の最期の時間を長めに確保できたのだから、結果として聖水を取りに行ったのは正解だったと思う。
この一件で、ミアたちは僕の教室に足を運んでくれるようにもなったしな。
まぁ、それから数ヶ月も経たないうちに僕が学園をクビになったから、初歩的なことしか教えられていないが。
いずれちゃんと教えられたら良いな。
「むうぅ〜。母様〜」
突然エマが抱きついて来た。
「おい、エマ!?」
「すぴー」
どうやら寝ぼけているらしい。けれど、腕には力が入っており、中々離してくれない。
「ふぁ〜。ごきげんよう」
その時、ちょうどミアが起き出してきた。
「ちょっとあんた達なにやってんのよ!」
ミアは右手で拳を作る。なんか前もこんなことがあったな……。
僕は朝っぱらから、頭にたんこぶをこしらえるのだった。
◆❖◇◇❖◆
大きな口が僕を飲み込もうと近づいてきた。口内には肉をすり潰すことに特化したすり鉢状の歯が並んでいる。
サンドワームという大柄な魔物の口だ。僕は紙一重で横に避けつつ、すれ違いざまにショートソードをお見舞いした。
「キシャアアアアアアア!!!」
サンドワームは悲鳴をあげつつ、砂の中に潜っていく。そこで僕は懐から音爆弾を取りだし、サンドワームの元に投げてやる。
「全員、両手で耳を塞ぐんだ!」
そう言うと、僕もショートソードを地面に落とし、両耳を抑える。数秒後、キーンという不快で大きな音が周囲に響く。
人間より音に敏感なサンドワームは堪らず砂の中から飛び出してきた。音にやられたのか、痙攣していて動きも鈍い。
「アイスアロー!」
クラリッサが氷の矢を放ち、サンドワームの下顎を破壊する。顎の外れたサンドワームは口内がよく見える状態になっている。
「あとは任せなさい!」
ミアはロングソードに炎を纏わせると、大きく跳躍し、サンドワームの大きな口にロングソードを突っ込ませた。
弱点の口内を消し炭にされたサンドワームは、しばらくの間ピクピクと動いたいたが、やがて息絶える。
「や、やっと終わったわ」
ミアは乱れた呼吸を整えながら、膝を地面におろす。
「やっぱり、この辺りの魔物は強敵揃いだな」
湖の傍で野宿をしてから約5日、僕らはペレ砂漠の奥地で探索を続けていた。
砂漠の外縁と異なり、砂が細かいために歩く度に足が砂の中に沈む。なので探索は思うように進んではいない。
「レオン先生もこっち来て〜」
「ああ」
僕はミアとクラリッサに白魔法をかけているエマのところに行く。
「ヒール」
白くて暖かな光が僕の身体を包みこむ。光が四散すると同時に、僕の身体にあったかすり傷が全て消え去る。
「ありがとう」
「全然良いよぉ。私は戦闘じゃあんまり活躍できないし」
「まぁでも、白魔法士の君がいてくれるのは有難いよ。回復手段がないせいで全滅になるパーティは多いからな」
「ふふふ。レオン先生にそう言って貰えるのは嬉しいなぁ」
「ちょっと! またそこで良い雰囲気になってるんじゃないわよ!」
「すまんすまん」
僕は速攻で謝る。また頭にたんこぶをこさえるのはごめんだ。
「ねぇ。あそこになにか建物がある」
僕はクラリッサが指さす方向を見る。しかし、視界にはただの砂地しか映らない。
「なにも見えないわよ」
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