第10話 強敵と戦おう!
周囲よりも一回り大きな穴が、土を空中へと吹き飛ばしながら現れた。そこから一際大きな手が伸びてくる。
這い出てきた魔物は、姿形はコボルトに近い。けれど、体格は他のコボルトより大きい上に、手には杖を握っている。
コボルトメイジのお出ましだ。コボルトメイジは手下のコボルトを殺されたからか、眉間に
「遂に姿を現したわね!」
ミアがコボルトメイジに駆け寄る。コボルトメイジは複数の火球を彼女に向けて連射するも、ミアは全て交わし、ロングソードを横なぎに払う。
ガキイイイン!
しかし、ミアの攻撃は太刀によって防がれた。防いだのはコボルトメイジではなく、別のコボルトだった。
そいつは身長はコボルトメイジと同じくらいだが、普通のコボルトやメイジよりも筋肉質な見た目をしている。
「コボルトメイジだけじゃなく、コボルトウォリアーまでいるだと!?」
これは想定外だ。そんな中――。
「ガルルルルルゥゥ!!! ガアアアアアア!!!」
コボルトメイジやコボルトウォリアー以上に巨大なコボルトまで登場するのだった。
◆❖◇◇❖◆
そいつは、コボルトはおろか、人間よりもふた周り大きな存在だった。筋骨隆々な上、どこからか拾ってきたのか、大きな
その姿はミノタウロスにも引けを取らない。
「コボルトキングか!」
コボルトキングはコボルトの最上位種だ。冒険者ギルドでは、基本的にミスリル級以上の冒険者が複数人で討伐することを推奨している魔物である。
僕はオリハルコン級冒険者ではあるものの、補助魔法士はあくまで味方の支援に特化しているため、そこまで戦闘に向いていない。
なので突然現れた強敵にどう立ち向かうべきか迷う。
ミアは先ほどからコボルトメイジやコボルトウォリアー、更には他のコボルトたちに囲まれている。
それでもミアがコボルトたちを圧倒しているが、倒すのにはまだ時間がかかりそうだ。
しかし、コボルトキングは待っていてはくれない。ゆっくりと、着実に僕のいる方へと迫ってきていた。
「僕がやるしかないか。エマ、クラリッサ! 援護してくれ!」
それだけ言うと、僕は腰からショートソードを取りだし、コボルトキングに向かって走り始めた。
◆❖◇◇❖◆
「ガアアアアアアアアアア!!!!」
コボルトキングは僕がやつに向かって走り出したのを見て、同じように速度を上げる。
コボルトキングに近づくと、やつは戦斧を僕に向けて振り下ろしてきた。
紙一重でそれを交わすと、コボルトキングの右足にショートソードで切りつける。赤い鮮血が流れたものの、あまり効いているようには見えない。
浅くしか切りつけられなかったので当然ではあるが。
振り下ろされた戦斧は土埃を舞いながら地面に叩きつけられる。次の瞬間――。
「――! くそっ!」
戦斧は奇妙な軌道を描きながら、なんと僕の目の前まで迫ってきた。僕はそれをショートソードで受け止めるも、空中へ吹き飛ばされる。
「こいつ、今身体強化魔法を使いやがったな」
いくらコボルトキングが筋肉質だとはいえ、今の不自然な戦斧の軌道が魔法なしにできるとは考えにくい。
なにより、コボルトキングからは一瞬だけ魔力を使った気配が感じられた。
僕は吹き飛ばされたまま、20メートル彼方へと着地する。
コボルトキングは僕に向けて追撃しようとした。しかし――。
「
「ガルルルルルヴァ!?」
コボルトキングの周りに金色に光る粉が舞い散り、まるで真昼のように明るくなる。
近くの家屋の庭を見ると、エマがそこから光魔法を行使していた。
コボルトキングはニヤリと下卑た笑みを浮かべる。攻撃されると思えば、ただ単に周囲を明るく照らされただけだからだろう。
だが、その認識は甘いと言わざるを得ない。
バスッ。
「ガル?」
しかし、振りあげようとした左腕はそこには存在しなかった。
コボルトキングの左腕は肩から消失している。
ボトッ。
何かが落ちる音が聞こえたため、コボルトキングは足元を見る。そこには彼の左腕が転がっていた。
「ヴガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!」
左腕を直視した後、遅れてきた痛みにコボルトキングは悶え苦しむ。
僕は後ろを振り返る。そこには、大きな弓を持ったクラリッサが大きな木の上に佇んでいた。
なるほど。エマがコボルトキングの周りを明るくして、クラリッサが遠くから狙撃したのか。
何はともあれ、今はコボルトキングを倒すチャンスだ。やつは痛みに悶え苦しんでいるからな。
クラリッサは、魔法で矢を生成すると、第2射を放った。
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