第7話 村に行こう!
「ちぇ〜。レオン先生の後ろが良かったなぁ〜」
「私も」
「うふふっ。残念だったわね」
グーをだしたのが僕とミア、パーをだしたのはエマとクラリッサだった。
そのため、僕の後ろにはミアが上機嫌で座っている。
僕の腰に手を回してくっついているため、背中にふくよかな膨らみがときどき当たっているので理性を保つのが辛い。
「建物が見えてきたわ! あれが依頼をしてきた村じゃないかしら?」
ミアが指さした方向をよく眺めると、地平線の彼方に見張り用の
暫く馬を走らせていると、村の外観がよく分かるようになった。柵の長さは最低でも普通馬5頭分くらいはありそうだ。
見たところどこかが破壊されているというわけではなさそうだな。コボルトはいったいどのように村へ進入しているのだろう?
「旅の者か?」
村の入口に近づくと、物見櫓にいた茶髪の男が声をかけてきた。
「いいや、僕たちは冒険者だ。依頼を受けに来たんだが」
「おお! 遂に来てくれたのか! ちょっと待っててくれ!」
足をばたつかせながら男は櫓から降りると、村の門に取り付けられた木窓から顔をのぞかせる。窓といっても、人の顔1つ分くらいの小さな窓だ。
その上ガラスも取り付けられていない。
「ここ最近は平和だからだいぶ減ったが、今でもこの辺りには稀に盗賊がでるんだ。申し訳ないが、冒険者プレートを見せてくれないか?」
彼の言い分はもっともだ。僕たちが本当に冒険者なのかは、彼からしてみたら分からないわけだからな。
「これで良いか」
僕は冒険者プレートを手渡す。
「パーティ名は雷光の追放者と。聞いたことのないパーティ名だが、冒険者プレートはどうやら本物みたいだな……って!? おい、あんたまさかオリハルコン級冒険者なのか!?」
「一応は」
「一応って……。どうしてオリハルコン級冒険者のあんたがコボルト討伐の依頼なんて受けたんだ?」
疑いの目を向けられる。
僕は彼に後ろのミアたちが戦闘経験が不足していることや、パーティを結成したばかりなので弱い魔物で連携しようと思っていることなどを伝えた。
「話に矛盾点はなさそうだな。了解した。あんたの話を信じよう。プレートも返す」
「理解してくれて助かる」
村の門が男によって開けられる。見事僕たちは村の中に足を踏み入れることができたのだった。
◆❖◇◇❖◆
村の中は特段変わったところはなかった。むしろ本当に魔物の襲撃を受けているのかと疑いたくなるほど平穏な雰囲気が漂っている。
男性は農作業や家畜の世話に精をだし、女性たちは子守りや洗濯をしていた。
しかし、奇妙なことに村の至る所の地面には、何者かが掘った穴が空いている。
農村だし、モグラでも大量発生したのだろうか。
僕らは村長の家へと案内される。
「これはこれは冒険者殿、遠くから良くぞおいでなすった」
白ひげを長く伸ばした村長に出迎えられた。僕たちは応接室にあるソファに腰をおろす。だされたお茶を一服してから、僕は依頼の話を切り出した。
「コボルトに襲われているとのことだが、奴らはどうやって村に侵入して来るんだ? 見たところ、村を囲んでいる木製の柵には損傷が見られなかったんだが。もしかして僕たちが入ってきた場所とは別のところを壊されでもしたか?」
「それがですのぉ。コボルトたちは皆が寝静まった深夜に穴を掘って村に侵入してくるのじゃ」
なるほど。確かにコボルトは穴を掘るのが上手い魔物だ。村中にあった穴はコボルトたちの手によるものだったのか。しかし――。
「それなら見張りが穴からでてきたところを攻撃すれば良いんじゃないのか? コボルトなら普通の村人でも倒せるだろ」
「普通のコボルトならそのように対処できるのじゃが……」
「ん? 現れるのは普通のコボルトではないと?」
亜種や変異種なのか?
「そうじゃ。コボルトたちも穴も、中々姿を見ることができなくての。村人の男衆たちで返り討ちにしようにも、奴らがどこにいるのか全く分からないのじゃ。それで混乱している間に、食料や幼子を奪われている、という状況かのぉ」
「コボルトも穴も姿が見えない? つまり、あんたはコボルトは透明になる能力でも持っているとでも言うのか?」
そんなコボルトは聞いたことがないぞ。
「そうじゃ。信じられないかもしれんが、他の村人にも聞いてみると良い」
「私たちが村長の家に来るまでの途中、沢山の穴が地面にあいていたのを見たのだけれど。時間がたつと見えないはずの穴が見えるようになるのかしら?」
「その通りですぞ。だいたい朝方になると良く視認できなかったはずの穴が見えるようになるのじゃが、その時には既にコボルトたちは撤退した後での。途方に暮れるしかないのじゃ」
となると考えられるのは――。
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