第3話 パーティ結成!

「何故だ? ミアは別に実家から逃げる必要は特にないだろ」


 こいつは一応、ランバルト公爵と正室との間に産まれたため、エマやクラリッサと異なり正式な貴族の子供であるといえる。なので幼少期から英才教育を施された。


 しかし、ミアは自由奔放なおてんば娘だ。先程校長の執務室に乗りこんでいったように喧嘩っ早い上、すぐ無茶なことをしようとする。


 そんな性格であったので貴族の茶会で乱闘を繰り返し、両親からは疎んじられてしまったようだ。おまけにおてんばなことが他の兄妹たちに悪い影響を与えたら困ると、ミアは屋敷を追い出されるような形でサンタリア学園に預けられていたらしい。


 なので別に実家へ帰ったとしても、両親に半ば見捨てられている以上、無理に婚約させられたりはしないと思うのだが。


「だって家に帰ってもすることがないじゃない。兄妹たちに会うのも気まずいわ。そんなことより、私は冒険者になりたいのよ! 昔から自由に生きてる冒険者には憧れていたのよねぇ」


「冒険者もそんなに自由な職業じゃないと思うけどな……」


 まぁ、ミアは貴族の夜会よりも野山にいる方が似合ってる気がする。


「あら? レオンって冒険者になったことあるの?」


「言ったこと無かったか。僕は教師をする前は冒険者だったんだ。特定のパーティに属さず、色々な冒険者とタッグを組んで魔物と戦っているうちに補助魔法士のなり手が減っていることに気づいてさ、このままじゃ戦闘に大きく貢献できる補助魔法士が減ってしまうと思って教師になったんだ」


 結局の所、教師になっても補助魔法士のなり手をあまり増やすことはできなかったけどな。授業外に生徒を集めて補助魔法の重要性を説明したりしたものの、地味だからという理由で補助魔法は敬遠されてしまった。


 だから補助魔法の授業を選択してくれてたミアたちには感謝していたりする。恥ずかしくて彼女らの前ではこんなこと言えないけどな。


「そうだったのね。それならレオン、あなたも私のパーティに参加しなさい!」


 僕は肩をすくめる。


「分かったよ。どうせ他にすることなんてないしな」


 新人冒険者の生存率は低い。多くの新人はゴブリンやオークなどの低級な魔物を討伐したことで慢心し、無謀な依頼を受けて死亡するからだ。


 なので僕みたいな経験者がパーティに加わった方が、彼女らの生存率を上げることができる。元生徒である彼女たちの身になにかあったら目覚めも悪いしな。


 ここは僕がしっかり面倒を見るべきだろう。


「よし、なら早速冒険者登録するぞ。エマとクラリッサもそれで良いか?」


「私はレオン先生がいてくれるなら良いよ〜」


「私も」


 うん。やっぱり彼女たちも僕がいた方が安心なのか。まぁそうだろうな。何しろ彼女たちはまだ15〜6歳の少女なのだから。


 社会にでた経験がないのだから、自分たちがこれからやっていけるのか心配になるのは当然のことだろう。


 ちなみに僕の年齢は25歳だ。若者ともおっさんとも呼べない中途半端な年齢である。


「レオンはもう冒険者ギルドに登録してるのよね。あなたの等級がなにか気になるわ」


「ああ、一応20まで冒険者をやってオリハルコン級まで登り詰めたぞ」


「「「オリハルコン級!?」」」


 驚くのも無理はない。オリハルコン級はいちばん高い等級だからだ。冒険者の強さは等級によって分類されている。


 上からオリハルコン、アダマンタイト、ミスリル、白金、金、銀、銅、鉄の順に冒険者の強さは表される。


 殆どの冒険者は金級で一生を終えるか、魔物に殺されるか、又は治癒魔法で治せない大怪我を負って冒険者を引退する。


 それを考えれば20歳で最高位のオリハルコン級冒険者になれたことは光栄な事だと思う。


「レオン先生凄い〜」


 エマが今度は真正面から抱きついてくる。


「ちょっと! レオンから離れなさい!」


「うん。先生困ってる」


 ミアとクラリッサがエマを引きはがそうとするも、エマは中々離れてくれなかった。再び周りからの視線が痛くなる。


 僕たちは慌ててミアたちの冒険者登録を済ませると逃げるようにして冒険者ギルドを去るのだった。


 ◆❖◇◇❖◆


「今日はこれからなにをするの?」


 クラリッサは小首をかしげる。


「僕たちはそれぞれ自前の武器は持っていても、それ以外の冒険に必要な道具を持っていないだろ。だからそれを揃えておこうと思う」


 雑貨屋に行き、火打石やロープ、回復ポーションなどを購入していく。僕はふと、武器屋の前に止まった。


「そう言えば君たちは予備の武器は持っていたりするのか?」


「私はこれを持っているわ」


 ミアが腰に取り付けてあるナイフを見せてくる。そのナイフは反りがなく、切っ先が鋭く尖っていた。


「投げナイフだな。持っているのはこれだけか?」


「いいえ。全部で7本あるわ」


「他にも装備があることを考えれば妥当な数だな。持ちすぎても機動力が落ちてしまうし。おまけにメイン武器がバスターソードなのに対して、サブウェポンが遠距離なのも流石だ。遠近両方の攻撃手段があると便利だからな。まぁ、ミアは魔法も使えるから元々汎用性が高いだろうけど。2人はどうだ?」


 エマとクラリッサは首を横に振る。


「私は今まで後方で負傷者を手当てすることに想定して過ごしてきたから、武器は持ち合わせていないのぉ。白魔法だけじゃくて、攻撃魔法もそこそこ使えるから要らないかなと思ってた〜」


「私の場合、あんまりお金を持ってないから買えてない」


 サンタリア学園では実際に魔物と戦ったりもするんだが、基本的にメイン武器での戦闘しかやらないからなぁ。いざ戦場で、引率の教師なしで戦うとなるとサブウェポンも必要なはずだ。


「よし、なら買いに行こう」

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